第34話 想像以上に重たい話
「あら、どうしたのかしら? わたくしに何か伝えようとしている……のかしら?」
その小さな小竜からは敵意が感じられず、むしろわたくしへ何か必死に伝えようとしているように感じ取れる。
そして小竜は少し先で止まると、わたくしの方を振り返り「ぴゅいぴゅいっ」と鳴くではないか。
「……わたくしについて来てほしい場所があるという事かしら?」
そのわたくしの考察は当たっていたようで、小竜はわたくしを先導しながらとある場所に着く。
そこには怪我をして力なく横たわっている、この小竜の親であろう巨大な巨躯をもつ白銀に輝く竜がそこにいた。
なるほど、この竜の傷口から魔力が垂れ流れており、恐らくハルピュイアイ達はこの魔素によって増殖したのだろう。
逆にいえばハルピュイアイ達が増殖しなければこの漏れ出ている濃い魔力によって麓にいる村人たちは酷い魔力酔いや、最悪中毒症状を起こして死んでしまう可能性だってあったのかもしれない。
そう考えると自然とは良くできたものであり、ハルピュイアイもこの自然のサイクルの一つなんだという事を知ることができた。
しかしながら、それはハルピュイアイ達を全滅させてしまった今、先ほど想定した最悪の可能性が麓も村に襲うという事でもある。
「…………小さき者よ、先ほどの戦いは見事なものであった」
いったいどうすれば良いのか、問題解決したと思ったらもっとヤバい事が裏で起きていたと知り頭をフル回転させているわたくしへ、巨大な竜が優しい声音で話しかけてくるではないか。
「あ、ありがとうございますわ……。というか、見られていたのですのね?」
「あれ程うるさい音を立てながら戦っていれば嫌でも気が付くというものでしょう……。しかしそんなあなたにわたくしから一つお願いがあるのですが、きいてくれますでしょうか?」
「わ、わたくしごときでよろしければ何なりとお申し付けてくださいまし……っ」
「あなたほどの力を持ち、そして我が眼で実際にオーラを確認して善の存在であると分かったあなたに、私の娘であるこの子を親代わりに育てて欲しいのです」
「……………わ、わたくしが……ですの? というか傷を治す方法はないのですのっ!?」
「残念ながらこの傷を治す方法は無く、私は死を待つだけの存在でしかございません。小さき者からすれば大きな決断となってしまわれるかと思いますが、どうか私の最後の願いを聞いてはもらえないでしょうか?」
そして母竜がわたくしにお願いをしてくるのだが……想像以上に重たい話で言葉に詰まってしまう。
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