第78話 決着
キノコ怪人は地上に出て北の森の中を走っていた。背後で何度も爆発が起きている。その分では今頃はダンジョンは崩れて、ラインマスクたちは生き埋めになっているだろう・・・。キノコ怪人はしばらく走って逃げた後、振り向いてみた。すると遠くで大きな煙が上がっていた。
「ふふふ。これでラインマスクは終わりだ! ダンジョンは失ったがラインマスクを倒したのだから、サウロン伯爵にお許しいただけよう」
「それはどうかな!」
「なに!」
キノコ怪人本体は聞こえてきた声に驚いて周囲を見渡した。
「き、貴様は!」
キノコ怪人本体は前方の木の上に人影を見た。それが俺だった。
「天が知る。地が知る。人が知る。俺は正義の仮面。ラインマスク参上!」
俺は早速名乗りを上げた。グッドタイミングだ。このようにきまると気分が爽快だ。キノコ怪人はまだ驚きを抑えきれないようだ。
「貴様は生き埋めになったはず・・・」
「ははは。ダンジョンを爆破して俺たちを生き埋めにしようとしたがそうはいかん。ジャンプして天井を突き破ったのだ!」
これはTVのラインマスクの定番だ。地下の基地から脱出するときはいちいち出口まで行かずに、飛び上がって強引に天井を破って外に出る。今回も勇者ノブヒコとペロを両脇に抱えて出てきたのだ。
本来ならパーティーのメンバー全員でキノコ怪人に向かって行くのだが、今回は俺だけにしてもらった。戦隊ヒーローではない俺は単身で怪人を倒さねばならない・・・と思ったわけだ。
「キノコ怪人。お前の悪事は潰えた。正義の鉄槌を受けるがいい! トォーッ!」
俺は木から飛び降りてキノコ怪人のそばに降り立った。
「おのれ! 八つ裂きにしてくれるわ!」
キノコ怪人は襲い掛かってきた。そのパワーとスピードは分身体を桁違いだ。さすがは本体だけはある。お互いにキックとパンチを放つが有効打にはならない。
「この俺の力を思い知れ!」
キノコ怪人はさらに激しく攻撃を仕掛けてくる。俺はその勢いに圧倒されて後ろに下がった。奴の勢いはすさまじく一方的にやられている。だがここは一気に逆転して挽回しなければならない。俺は
「ラインフィーバー!」
を発動した。奴にダメージを与えようと俺の体から高い熱を放出したのだ。すると奴の体が熱し始め、一部が発火し出した。そうなるとさすがの奴の動きが鈍ってきた。
「今だ! トォーッ!」
俺はジャンプして空中で体を伸ばしドリル状に回転した。空気の摩擦で体から火が立ち上る。
「ラインドリルキック!」
ベタだが強力なキックだ。それはキノコ怪人を貫き、奴は火に包まれた。俺は着地して振り返った。
「ダンジョンは爆発して高熱に包まれ、お前も火に包まれた。胞子は残らない。今度こそお前の最期だ!」
「おのれ・・・」
キノコ怪人はそう言いかけて爆発して消し飛んだ。久しぶりに派手な最期だ。爆風が俺のマフラーをなびかせ、燃える火が俺を照らしている・・・うーん、かっこいいと自己満足に浸る俺であった。
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