第45話 新たな仲間
一応、ジョーカーは追い払ったが、後味は悪かった。恵子は美智代の亡骸にすがって泣いている。ここはヒーローがなぐさめてやらねば・・・変身を解いて彼女のもとに行こうとした。だが俺より先に勇者ノブヒコが彼女に声をかけていた。
「彼女には気の毒だった。君の悲しい気持ちはよくわかる。だがいつまでも泣いていては彼女が浮かばれない。きっと彼女は君に強く生きて欲しいと思っているはずだ」
勇者ノブヒコがそう声をかけると恵子は泣くのをこらえた。さすがは勇者だ。こんなときの対処は心得ている。さらに勇者ノブヒコは言葉を続けた。
「あの世でも彼女は好きな歌を歌って踊るはずだ。さあ、元気を出せ! 君も彼女のために歌ってやるんだ。彼女をあの世に送り出すために・・・。」
すると恵子は顔を上げた。
「私・・・歌います」
すると彼女の中からまた曲の前奏が流れた。これも聞いたことはあるが・・・。
「春一番が掃除したての・・・」
これはキャンディーズだ・・・とツッコミを入れたくなったが、俺はあえて黙っていた。それはあのセリフを言うためか・・・。やがて曲を歌い終わり、恵子が大声で言った。
「普通の女の子に戻ります!」
ハニーレディをやめるということか・・・俺は聞いてみた。
「これからどうするんだ?」
「やってみたいことができたの。だからこの世での名前のアリシアに戻ってやりたいことをするの」
すると勇者ノブヒコは大きくうなずいた。
「それがいい。彼女も応援してくれるだろう」
「でもジョーカーが恵子、いやアリシアを狙ってくるんじゃないの?」
そこにミキが疑問を挟んだ。勇者ノブヒコはまた大きくうなずいた。
「安心してくれ。この勇者ノブヒコがこの世界を巡って、必ずジョーカーを叩き潰す!」
彼はまるでジョーカーを倒せるのは自分しかないと言わんがばかりだった。勇者はこんな自信満々でないと務まらないのかもしれない。しかしこの光景を見ているだけでは俺の影は薄くなる。俺もヒーローとしての存在を示さねばならない。
「ラインマスクが彼女の仇は私がきっと取る」
だが恵子改めアリシアは勇者ノブヒコの方を向いた。彼の言葉の方が説得力があったのかもしれない。
「私も連れて行って! 私も冒険の世界に飛びこみたいの!」
「えっ!」
「私もこの世界を巡りたいの」
「しかし危険だぞ」
「わかっているわ。でも私だって戦える。命を懸けるわ。お願い。」
「そこまで言うなら・・・。よし、わかった。君をパーティーに加えよう。我がパーティーにようこそ」
勇者ノブヒコが右手を差し出した。アリシアは笑顔になって握手した。これでパーティーの仲間が増えた。
しかしこのままでいいのだろうか・・・俺は自問していた。これではRPGになってしまう。俺は孤高の変身ヒーローものを目指していたはずだが・・・。
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