第39話 敵のアジト

 ミキがハニーレディの様子を見張ってくれていた。いまのところ広場近くのホールにとどまっているようだ。彼女は前世ではに存在していた。脳改造はされていないからその記憶が残っているだろう。俺は彼女と少し話したい気分になっていた。

 俺は張り込んでいる場所に行ってミキと合流した。ジョーカーはそのホールをアジトにしているらしく、スレーバーがうようよしていた。


「敵のアジトに潜入する。」

「ええ、無理よ! 警戒が厳しいのよ」

「それでも彼女に会って話を聞かねばならない!」


 俺はそう心に決めていた。すると不意に後ろから声をかけられた。


「それなら手助けしよう!」


 驚いて振り返るとそこには勇者ノブヒコが立っていた。


「びっくりするじゃないの! 急に後ろから現れて!」


 ミキも驚いていた。


(気配を消して近づくとは、さすがは勇者・・・なのか?)


 そんな疑問を抱きつつ、俺は勇者ノブヒコに尋ねた。


「潜入する方法があるのか?」

「任せておけ!」


 勇者ノブヒコは建物の陰に隠れながらホールに近づいて行った。俺もそれに倣ってついて行った。スレーバーが2人1組になって、5,6組がホールから少し離れたところまで巡回している。その1組が俺たちのそばに来た。


「今だ!」


 勇者ノブヒコは俺に合図してスレーバーの一人に襲い掛かり、音もたてずに倒した。そしてもう一人は俺が静かに締め上げてやった。


「これでよし! さて、これに着替えるぞ!」


 それで俺には理解できた。スレーバーに変装してアジトに潜り込もうというのだ。TVの相川良もこんな手でよくゲルト団のアジトに潜入していた。世界は違えど、方法は同じようだ。


 俺たちはスレーバーになってホールに戻った。そこで入り口に立っている警備のスレーバーに敬礼する。右手を頭の前まで挙げて「ウィース!」だ。違和感バリバリだが、スレーバーの敬礼はそうなっている。


「異常はなかったか?」


 警備のスレーバーが聞いてきた。


「異常ありません!」


 勇者ノブヒコが化けたスレーバーが答えた。


「それなら行け!」


 そう言われて俺たちは中に入ろうとした。するとその時、


「ちょっと待て!」


 警備のスレーバーが声をかけてきた。


(まずい! ばれたか!)と思ったが、できるだけ平静を装って俺は言った。


「どうかしましたか?」

「お前たちは2階の広間で待機だ。しかし奥の個室には入るな。ハニーレディが休んでいるからな」


(ばれなかった!)と俺はほっとした。しかしなんて親切な奴なのだろう。ハニーレディの居場所まで教えてくれるなんて・・・。


「わかりました」


 俺たちはそう言ってホールに入って行った。

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