第34話 黄色い粉
俺がやられていると勇者ノブヒコが声をかけてきた。
「どうした? ラインマスク! 怪人にやられっぱなしだぞ!」
(それはわかっている。かっこいい倒し方を考えているのだ!)と俺はそう思いながらも、
「だめだ! 姿が見えない!」
と盛り上げるために弱音を吐いてみた。すると勇者ノブヒコは、
「任せておけ!」
と袋から何かを取り出して俺の方に放った。それは空中で四散して辺りが黄色い煙のようなものに包まれた。
(なにをした?)
俺はジャンプしてそこから離れた。やがてその煙は静まった。だがそこには黄色い人型が浮かび上がっていた。あれは黄色い粉だったのだ。それがカメレオン怪人に付着したようだ。
「これで奴の姿はわかるはずだ! 頼むぞ! ラインマスク!」
「お、おう!」
おれは応じた。こんな古典的な手を使うとは思ってもみなかった。だが一番確実な手かもしれない。
「カメレオン怪人! 行くぞ!」
「しまった! これでは・・・クシャン、コホン、コホン・・・」
カメレオン怪人は咳やらくしゃみやらで大変そうだった。
「もしかしてカレー粉か? これまたコントみたいな・・・」
せっかくの戦いの場がコメディーになってしまう。こうなったらすぐにでも奴を倒してこの状況をつくろわねばならない。
俺はカメレオン怪人を捕まえて投げ飛ばした。そして俺も
「トォーッ!」
と大きくジャンプした。空中で回転して態勢を整えると、
「ラインキック!」
を放った。
「ドッカーン!」
カメレオン怪人はカレー粉にまみれたまま空中で大爆発を起こした。辺りに黄色い粉が舞い散る。もちろん香ばしいカレーのにおいもプンプンしている。その中を俺はゆっくり着地した。振り返るとカメレオン怪人の呪縛が解けたゴブリンが慌てて森の奥に逃げて行くのが見えた。
「やったな!」
俺は変身を解いた。そのとたん、
「ハックショ~ン!!」
と大きなくしゃみをした。カレー粉がまだ辺りに漂っていて、変身を解いた俺の鼻に直接刺激を与えたようだ。勇者ノブヒコもミキも同じようにくしゃみをしている。
「助かったな。ハクション。ゴブリンたちはもう襲って来ないだろう」
「ええ。くしゅん。よかったわ」
「とにかくここから離れよう。ハックション!」
俺たちはその場をすぐに後にした。それでも服からカレーの臭いがしている。これはしばらく取れそうにもない。
それはともかくジョーカーの企みは破った。俺は勇者ノブヒコに聞いてみた。
「これからどうするんだ? また旅に出るのか?」
「いや、しばらく君たちの町で厄介になるよ。せっかくパーティーを組めたし。できればもう少し君たちとミッションをこなしたいよ」
勇者ノブヒコはそう言いながらミキの方をちらっと見ていた。
(ははぁ。こいつ、ミキに気があるな)
俺にはピンときた。だがこいつはミキのことをあまり知らないだろう。少し教えてやるか・・・。俺は微笑みながらミキに言った。
「ミキ! 君がいてくれてよかった。君がいてくれるだけでうれしいよ」
するとミキは顔を真っ赤にしてそっぽを向いた。
「別にソウタのためじゃないわ。勘違いしないでよ!」
相変わらずにツンデレだ。それを見ていた勇者ノブヒコはうれしそうに聞いていた。もしかしたらツンデレ好きなのかもしれない。
しばらくはこの3人でパーティーを組むことになった。しかし変身ヒーローがパーティーを組むって・・・ますますカオスになりそうだった。
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