第33話 ラインマスクサーチ

 俺は大きくジャンプして空中で変身すると、華麗に回転して着地した。普通はここで名乗りするのだが、この状況で悠長なことはできない。ジョーカーの怪人を探さねばならないのだ。


「ラインマスクサーチ!」


 するとラインマスクの目が点滅し、アンテナが光った。これで普通は見ることのできない波長までもキャッチできる・・・という設定だ。それで周囲を見渡してみた。


「ん? あれは・・・」


 森の中の木の枝の上にかすかに人影が見えた。周囲と色を同じにしているため気づかなかったが、赤外線?をキャッチできるラインマスクサーチからは逃れられないのだ。


「そこだ!」


 俺は落ちていたゴブリンの棍棒を拾うと、それをそこに向かって投げつけた。


「グエッー!」


 それは怪人の腹を直撃し、奴は姿を現して地上に落下した。その姿と周囲に擬態できる能力から、カメレオン怪人か・・・。奴は苦痛に顔をゆがめながら言った。


「貴様! なぜ!」

「ふふふ・・・それはな・・・」


 俺はそこでポーズを取った。襲ってくるゴブリンは勇者ノブヒコとミキが何とか防いでくれている。ここは遠慮なく、堂々と名乗りをしてやる。


「天が知る。地が知る。人が知る。俺は正義の仮面、ラインマスク参上!」


(決まった!)俺は言い知れない快感に包まれていた。だがカメレオン怪人は痛みでそれに反応するどころではないらしい。もちろんゴブリンもスルーしている。


(仕方がないか。まあ、サクッと怪人を倒しておくか)


 俺はそう思ってカメレオン怪人に向かっていった。早く倒さないとゴブリンの相手をしている勇者ノブヒコとミキが危ない。

 だが俺がパンチを放とうとした瞬間、フッと消えてしまった。また擬態能力を使ったようだ。近くにいると思うのだが、やはり肉眼ではわからない。ここはまた「ラインマスクサーチ」を使えばいいのだが、それでは簡単に奴の居場所がわかってしまう。それに奴はもう隠れないで俺に襲い掛かってくるだろう。姿が見えないアドバンテージがあるうちは・・・。


「バーン!」


 やはりカメレオン怪人は俺の背後から攻撃してきた。多分、数発のパンチとキックを食らったようだ。俺はダメージを受けて前のめりになったが、振り向いて反撃しようとした。

 だがそこにはいない。完璧な擬態能力だ・・・そう思っていると、また背後から攻撃を受けた。


「手も足も出るまい!」


 奴はいい気になって話しかける。そんなことをすれば居場所がわかってしまうというのに・・・。ここは盛り上げるため俺はスルーすることにした。すると奴はいい気になって前からもパンチを放ってきた。腹部や胸部に激しい衝撃を受けて俺は片膝をついた。


「いいざまだ! このまま倒してくれる!」


 カメレオン怪人はなおもしゃべり続ける。それで奴の居場所はわかり、だいたい見当をつけて攻撃すれば当たると思うのだが、それではこの状況シチュエーションを生かし切れていない。

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