一周目は剣士レベル100、二周目は魔法師レベル100、三周目は廃嫡王子レベル1

年中麦茶太郎

第1話 ゲームの二周目が終わり――

 たまにネットで『田舎は電車が一時間に一本しかない』なんて書き込みがある。

 瑠衣はそれを見るたびに、首を傾げた。

 自分の村には線路さえないので、駅があるというだけで都会に見えるからだ。


 いわゆる限界集落。

 村唯一の小学校に通う生徒は瑠衣だけ。

 だから小学六年生になっても同年代の友達は一人もいない。


 娯楽のない村で唯一の楽しみは、オンラインゲームだった。

 ゲームの中には広い世界があった。世界中の人たちと繋がれる。


「よし。レベル100まで来た。これでまた転生できる!」


 そのゲームはレベル100まで成長すると、パラメーターとスキル、それからアイテムを一つだけ、、、、引き継いでレベル1からやり直せる仕組みになっている。

 最初は剣士をレベル100にして、今度は魔法師をレベル100にした。

 二つの職業のスキルを合わせ持った、凄まじい戦闘力のキャラになった。


 瑠衣は操作も上手いので、ほかのプレイヤーから一目置かれている。

 協力プレイしてくれと毎日メッセージが来る。


 ところが先日のアップデートで、瑠衣でも勝てないボスが実装された。

 今までのボスは『魔族』がほとんどだった。

 今回から『外神』という新しい勢力が現れた。

 魔族とは比べものにならない強さで「運営の調整不足」とか「ゲームバランス崩壊」とか言われて炎上していた。

 しかし瑠衣は、倒しがいのある敵の登場に心を躍らせていた。


――――――

名前:ルイ

職業:魔法師

Lv:100

HP:2015

MP:2000

攻撃:1003

防御:1004

魔力:1001

俊敏:1009

――――――


 さて。次は何の職業にしよう。

 重騎士になって防御を上げまくるか。盗賊になって俊敏を上げ回避力を重視するか。


「引き継ぐアイテムは『精霊剣セレスティア』って決めてるけど……転生はしばらく保留かな。アプデで調整が入るかもしれないし。それより引越しの準備をしなきゃ」


 村での暮らしに、両親もついに根を上げた。

 瑠衣が小学校を卒業するタイミングで、町に引っ越すと決めた。

 中学からは、ほかにも生徒がいる学校に通うのだ。


「楽しみだなぁ。友達沢山できるかなぁ」


 ところが引越しの途中、大事故に巻き込まれた。。

 中学校に行くことも、転生することも、外神を倒すこともできず、瑠衣は死んだ。

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