幼馴染の金髪ヤンキーと黒髪JKが恋愛相談所を立てる話
馴鹿谷々
プロローグ
恋愛、人間関係、学業だけでなく、様々なことを学べるのが、「学校」というところだ。集団で行動することで、社会に出たときに、路頭に迷わずにすむ。
国が将来まともな人間になるように教育をする場所だ。
だが、そんな学校に馴染めない人もいる。
面白いことを言えないやつ、人間関係が上手く築けないやつ、融通が効かないやつ。
人間なんて全世界に70億人もいるのだからそんなやつが一人ぐらいいたって全くおかしくないはず。けど、それらを自分の視界に入れないように排除するやつもいる。
俺、
小学校に入り、最初は普通に過ごせていた。
「友達」と呼べるような人も少しづつ増えていったし、勉強も得意な方だった。
だが、それが変わったのが入学から4年がたったある日。うちの学校は田舎にあったので、クラス替えなども特になく、メンバーがずっと変わらず6年間過ごせるはずだった。小学4年生になりたての4月、この田舎の学校に一人の転校生がやってきた。
新しいメンバーが入ってきたということで、しばらくは転校生の話題でもちきりで、毎日昼休みや小休憩のときなどにはその子の席に人だかりができていた。
その転校生は、「面白い話ができる」人で、すぐさまクラスのカースト上位に入り込んでいった。しかし彼は少し気が強く、自分を否定されることを強く拒む人間で、
注意されたことを素直に受け止められない子供だった。
そして、すごく負けず嫌いでもあった。
ある日、体育の授業で、サッカーが行われることになった。
チームは体育委員が決めるのだが、体育委員は転校生と
昼休みにみんなが見守る中、体育委員のチーム決めが行われる。転校生は、負けたくなかったのか、自分のチームだけに足が速い、運動ができる人だけを集めようとしていた。それを御手洗華が
「一つのチームに強い人が偏るのは良くないよ。平等にしないと。」
というと、
「うるさいな! お前は足が遅いんだから黙ってろ。」
と、厳しい言葉で言い返した。すると、急な大声にびっくりしたのか、御手洗華は小さな声で泣きながら、トイレへと走っていってしまった。
それを見ていたクラスメイトは、誰も彼女を慰めに行こうとはしなかった。
彼女も俺と同様、クラスカーストの下位のほうなので、誰も助けに行こうとはしないのだ。しかもそれをスクールカースト最上位の転校生が言ったわけなので、
(あの人が言うなら……)となるわけだ。
翌日から、転校生は御手洗華のことを無視し始めるようになった。
するとクラスメイトも真似をして、御手洗華を無視し始めた。
――それがこのクラスの「当たり前」になるのに時間はかからなかった。
そう。「イジメ」というやつである。
世界で最も下劣で、惨めな行為。それが怒ってしまうのが人間の弱肉強食社会というわけだ。
行動は日に日にエスカレートしていき、ついには暴言まで吐かれるようになった。
クラスの担任も気づいていたんだろうが、見て見ぬふりをしていた。
俺は、母さんにずーっと言われ続けていた、
「女の子を泣かせちゃだめ。女の子を守るのが男の子としての使命よ。」
という言葉を思い出した。昨今の色々的にはあまりよろしくないのかもしれないが、男として、女子を守る。それは、最高にかっこいいことだと、俺は思った。
だから、ある昼休み、行動を起こしたんだ。
「おい、鈍足女! なんか言い返してみろよ。勉強しかできないくせに!」
「こんなことするのはよくないよ。 御手洗さんが可哀想だ!」
勇気を出して暴言を吐いている転校生に言った。
今更ながらに思えば、変な正義感だったのかな。
けど、俺はその時、きっと男として最高に輝いていた。と思う。
でも、そんな正義感で、人は変われない。
「なんだ? 正義振りかざして、かっこいいと思ってるのか?」
転校生から返ってきた言葉は残酷だった。御手洗華は安心したような、感謝しているような顔を半泣きになりながらしているが、俺は、目の前のバケモノとの会話に必死だった。
「イジメはよくないって道徳でやるだろ! そんなことしちゃだめだ!」
すると転校生は、大きな舌打ちをして、教室から出ていった。教室に残ったのは、俺と御手洗華だけ。俺は御手洗華に声をかけた。
「御手洗さん。大丈夫?」
「う、うん。 助けてくれてありがとう! 霜月くん、すごくかっこよかった。」
「そ、そうかな? ありがとう。 これからも仲良くしようね! 御手洗さん!」
「うん!」
そんな会話をして、俺は御手洗さんが泣き止んだのを確認して教室を出た。
――翌日
標的になったのは俺だった。
漫画とかドラマとかでよくある展開。女の子を助けた主人公がイジメの新しい標的になる。主人公は、女子の支えを受けて、なんとかイジメを乗り越える。
だが、イジメは受けて見る側になると、とても、とても辛い。
存在が否定される、自分の価値を見失う。
そんなことが毎日続く。
学校を休もうかとも思ったが、そうなるとまた御手洗さんがいじめられてしまう。
御手洗さんのためにも俺が耐えなきゃ。
そうおもっていた。
御手洗さんとは毎日図書室で一緒に本を読んでいる。
いじめられている俺にとって唯一の安らぎがそこだった。
「御手洗さん、この漢字ってどうやって読むの?」
「もう、
「えへへ、忘れちゃった。」
「これは にわ って読むんだよ」
「ありがとう! にわ か〜」
「それ、なんの本を読んでるの?」
「偉人伝!」
「へ〜そういうの好きなんだ〜」
「うん。御手洗さんは何読んでるの?」
「え〜私? 私はね……『ずっと片思い』っていう本」
「恋愛系の話ってこと?」
「うん。」
「御手洗さんがそんな本好きなんて意外だな〜」
なんて会話をしていた。図書室でだけは、本当に幸せだったと思う。
俺へのイジメは1年間も続いた。
5年生になった御手洗華はずいぶんと大人びていた。
「ねぇ、尊くん」
「どうしたの?華さん」
「私のせいで、ごめんね……」
いつものように図書室で本を読んでいると、御手洗華がいきなり言い出した。
「え? どうゆうこと?」
「私のことをかばったせいで、尊くん、イジメにあってるんだよね。」
「俺は華さんを守りたかったからそうしただけで、華さんのせいじゃないよ。」
「ありがとう。なんかあったら言ってね。私が慰めてあげるから。」
「それはありがたいですわ〜」
「はいはい」
御手洗華、いや、華さんは、優しさの塊みたいな人だった。本当に可愛くて、優しい、天使のような人だった。今思えば、これが俺の初恋だったのかもしれない。
でもそんな日々は、突然終わってしまった。
「御手洗華さんは、転校しました。」
担任から伝えられた事実に、俺はただ呆然とするしかなかった。
確かに昨日は学校を休んでいた。親の転勤が理由らしい。
華さんが学校からいなくなったことで、俺はもう学校に来る意味がなくなった
――そして俺は学校へ行かなくなった。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
どうも、作者の馴鹿谷々です。
今作少しプロローグとても暗い感じになってしまいましたが、
タイトルから分かる通り、ラブコメ作品です。
どうしても、尊の過去に触れておきたかったので、暗くなってしまいました。
プロローグは次回で終わり、その次々回くらいから甘々になる(と思われる)ので、ぜひ作品フォロー、応援よろしくお願いいたします!
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