偶然が世界を支配している

本条想子

第1話 ビッグバン

 ビッグバンが起こった。ビッグバンは地球の天文学の発達により、約140億年経っていることがわかった。すべての銀河は、地球から遠ざかっていた。それは、地球から2倍離れた銀河が2倍の速さで、3倍離れた銀河が3倍の速さという一定の割合であった。一点から始まったビッグバンは、複数の銀河の動きによって、膨張していることがわかった。この膨張速度からビデオテープを巻き戻すように逆算して、宇宙の誕生が138億年と計算された。


 宇宙創世は、無からすべてが生まれた瞬間であった。無限に小さい原子よりも小さい一点には、超高温、高密度の純粋なエネルギーが詰まっていた。ビックバンから一瞬で、光を越える速度で膨張し続けた。それは、重力とは逆の力で、物体同士を引き離そうとする斥力的重力だった。その時の宇宙は、原子が存在できない数兆度だ。しかし、次第に膨張するにつれ、温度が下がり始める。そして、エネルギーが原子より小さい粒子へと形を変え始めた。宇宙が形作られたのは、重力が現れたからだ。偶然にも、ビッグバン時に現れた重力はこの宇宙を形作るのに完璧な強さだった。


 アインシュタインはビッグバン理論が提唱される前に、エネルギーと物質が互いに変換可能なことを、有名な関係式E=mc2で示していた。 


 創世記の宇宙では、純粋なエネルギーが物質へと変換されていた。しかし、超高温、高密度のあまりにも壮絶な環境のため、原子は存在できず、原子より小さい粒子が存在していた。また、粒子が作られてもエネルギーに戻ることもあり、現れたり消えたりと混沌とした不安定な状況だった。宇宙が冷えるにしたがい、粒子がエネルギーに戻ることはなくなった。ここから、重要な段階へと進むことになる。

 

 物質と反物質の壮絶な戦いで、物質が勝利しなければ我々の宇宙は存在しない。正の電荷を持った物質と負の電荷を持った反物質の量が、鍵を握る。両方が同量ならお互いに全滅となる。しかし、宇宙が存在している事実は、物質の勝利を意味していた。

 宇宙の温度は下がり続け、それにつれて粒子同士が結合し、最初に作られた元素の原子核は水素だった。そして、さらにヘリウムとリチュームの原子核が作られた。このようなガスから星々が形成され、無数の銀河も形成され始め、我々の太陽系も形成され、この地球が誕生した。


 ビッグバンから、宇宙の膨張は今も加速している。銀河をつなぎ止めるダークマターもあるが、宇宙を膨張させるダークエネルギーもある。ダークエネルギーが宇宙を膨張させ続ければ、銀河団や銀河自体もばらばらに崩壊する。


 この世界では、電磁力のように、電気には正と負があり、そして磁気にはN極とS極とがある。同極同士では斥力が働き、異極同士では引力が働く。この宇宙では重力と斥力との、止めどもない戦いが続いている。

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