@ku-ro-usagi

ショートショート

娘の3歳の誕生日に

誰かからプレゼントされたものではなくて

母親の私から

「娘が自分で選んだぬいぐるみ」

をプレゼントしたくて

まぁただの親の自己満足なんだけど

某うさこちゃんのお店に連れていったよ

私が好きで

そしたら娘も自然と好きになるよね

「好きなの選んでいいよ」

とは言ったものの

さすがに娘の数倍くらいある大きさものは

金額的にも家の狭さからしても勘弁してもらって

両手で持ってぬいぐるみの背中に手が回らない程度の

ぎゅうっと出来るくらいの大きさの中から選んでもらうことにした

私は勝手に連れてきた癖に

(白だと汚れやすいな…茶うさこちゃんでも選んでくれないものか)

と思ってたんだけど、今は色んな色があるのね

素材も形も種類も感心するくらい

しかし

娘は

まぁ予想以上に選ぶ選ぶ

1つ1つの顔をじーっと眺めては次のうさこちゃんへ

あまりに熱心だから

「お話してるの?」

と聞いたら

「おじさんの声の子は嫌なの」

って

おじさん?

おじさんはママもちょっと嫌ね

はて、と

ボイス機能でもあるのかと手にとって確かめたけど

どうにもただのぬいぐるみ

娘は1つ1つ指差して

「この子はおばあちゃんの声、この子は、なんか意地悪な男の子の声、だからやなの」

と教えてくれた

なるほど

なるほど?

ママ

ぬいぐるみさんに声があるのは知らなかったわ

「子育てすると色々な発見がある」

と言うけれど、こういうことなのかしら

結局

悩みに悩んだ娘は

「自分より少しお姉さん」

な声の子を選んだらしい

常日頃

「妹じゃなくてお姉ちゃんが欲しい」

色んな意味で困らせてくれていたから納得のチョイスではある

会計しながら

ふと疑問が出てきた

家にあるぬいぐるみさんたちの声は聞こえているのかどうなのか

お姉さんボイスの某うさこちゃんを抱えて歩く至極ご満悦な娘に

「お家のぬいぐるみもお話をしてくれるの?」

と聞いてみたけど

娘は立ち止まると

私を見上げて

今まで見たことのない

にんまりとした笑みを浮かべて


「内緒なの」


と目を瞬かせた


一つの曇りもない眼で


あぁ


娘が


初めて私に


「秘密」


を作った













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