第5話マロンは一人暮らし…

休日の土曜日が訪れていた。

僕らは大きな公園の前で待ち合わせをしていた。

公園に併設されているジムとプールを利用してトレーニングに励む予定だった。

正午になる十分前に待ち合わせ場所に向かうとマロンは既に僕を待っている。

「ごめん。おまたせ」

「いえ。私も今来たところですよ」

薄く微笑んで応答するマロンにつられて同じ様に微笑むと僕らは目的地へと急ぐ。

「トレーニングメニュー考えてきたよ。今送るね」

「私のためにわざわざありがとうございますっ♡」

マロンは再び美しく微笑むとポケットで鳴ったスマホを手にしていた。

画面に表示されているトレーニングメニューを目にしたマロンはウンウンと頷いていた。

「そうですね。これぐらいならどうにか出来るかもしれません」

「そうだね。学校の体育以上には疲れると思うけど。休日の良い運動になると思うよ」

「ですね。時間かけて頑張りますっ♡」

気合い十分なマロンに薄く微笑むと僕らはジムの中へと入っていく。

受付で会員証を出すと500円を支払ってロッカールームへと向かう。

もちろん男女別のロッカールームであり僕らはトレーニングウェアへと着替えを済ます。

先に僕がジムの中へと入ると準備運動をしていた。

休日の正午のジムに人の姿はまるでなく殆ど貸切状態だった。

怪我をしないように準備運動を済ませたところでマロンは姿を現す。

マロンの姿を見て僕はなんとも言えない感情を抱いていた。

性欲が刺激されるようなエロティックな感じと普段は見られない姿を見た特別感が僕の心を大きく動かしていた。

ゴクリとつばを飲み込んで視線を彷徨わせているとマロンは何も気付いていないようでこちらに駆け寄ってくる。

髪型もいつもとは違い一つにまとめて結んでいる。

普段とは違う姿を見ただけでこんなにも特別感を感じるものなのだろうか。

そんな事を思いながらマロンに相対した。

「じゃあ準備運動してから始めてね。学校の体育の授業でやっている準備運動でいいから」

「うん。若菜さんはもうやったの?」

「そうだね。早く着替えが終わったから待っている間に済ませておいたよ」

「ですか。じゃあ先にトレーニングしていてください。若菜さんの方が厳しいトレーニングなんでしょ?」

「まぁ…そうだね。じゃあお先に」

そんな言葉をお互いが口にすると僕はトレーニング器具を使って筋トレを開始する。

マロンは僕の姿を見ながら準備運動をしているようだった。

そして僕らは一時間ほどのトレーニングを終えるとクールダウンのためにプールへと向かうことになった。

ロッカールームで着替えを済ませてシャワーで全身の汗を流すとプールへと入っていく。

今回もマロンよりも先に到着したためプールの中で泳ぐのでは無く歩いてクールダウンを行っていた。

おじさんおばさんに混じってプールの中の外周を歩いているとマロンも姿を現す。

彼女の水着姿を見て僕は我慢の限界が訪れそうだった。

可愛すぎるっ…!

こんな天使のような姿を目にしてしまったら僕の欲望や感情を抑えることができない。

高校生の僕には刺激が強すぎる。

雑誌のグラビアアイドルよりも身近な同級生の水着姿のほうがレアに感じるのは非日常すぎるからだろうか。

そんな哲学のような事を思考していないと正常な判断や行動を取れない気がしていた。

邪念を払うようようにマロンを受け入れると彼女もプールに入ってくる。

僕らは揃ってプールの中の外周を歩いてクールダウンを済ませると最後に温水プールへと向かう。

お風呂のような温水プールで冷え切った身体を少しだけ温めていた。

「お風呂みたいで気持ちいいですねっ♡」

マロンの緩みきった表情を見て僕は少しだけ心を許されているのでは無いだろうか。

と勝手な勘違いをしかけて頭を振った。

違うな。

きっとマロンは海外に住んでいたから誰にでもフランクなのだ。

そんな風に思わなければ僕の勘違いは加速していってしまう。

自分を律して数分間温水プールに浸かると僕らはプールを後にする。

シャワールームで全身を流すとロッカールームで着替えを済ませてジムを後にする。

外に出ると自販機で飲み物を二本買って木陰のベンチでマロンを待っていた。

かなりの運動だったため喉が渇いていた。

今度から飲み物を持ってジムの中に入ろう。

などと思考しているとマロンは僕の元へと向かってくる。

「はい。喉乾いたでしょ?」

「ありがとうございますっ♡カラカラでした…」

マロンは僕から受け取った飲み物を一気に飲むとふぅと息を吐く。

「この後どうしようか?」

彼女に問いかけるとマロンは少しだけ気まずそうに口を開いた。

「家に来ませんか?家族は海外に住んでいるので…一人暮らしなんですよ…」

その言葉をどの様に受け止めたら良いのか。

童貞の高校生である僕には最善手がわからない。

少しだけ気恥ずかしい表情でそれに頷くと僕らはマロンの家へと向けて歩き出すのであった。

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