第4話 群青新聞コラム 2023年5月10日

 喋れるかただそれだけで生き死にを決める奴が人の心を語るな


              

 MēdeiaというTwitter歌人の短歌は1日で1万5千リツイートを超え、今もなお拡散され続けている。


 この歌の矛先は、3年前の7月26日深夜に高崎市内の障害者福祉施設藍光園で起きた殺傷事件の加害者梶原充死刑囚だろう。


 梶原は23人の利用者を刃物で切り付け15人が死亡、8人が重軽傷を負った。


 当時マスコミが被害者の名前を実名報道せず物議を呼んだ。


 何より議論すべきは、梶原が裁判で「意思疎通のできない重度障害者は人間ではない」「不幸しか呼ばない」等と発言したことだ。


 梶原は以前同施設の職員として勤務していた。最初は「利用者が可愛い」「仕事が楽しい」と友達に話すなどやりがいを感じていたが、2年目位から周囲の人に「重度障害者は殺すべき」「奴らに遣われる税金は無駄」などと発言するようになったという。


 やがて彼は「私は重度障害者を殺すことができます」などと綴った手紙を首相官邸に提出したことで、強制入院を余儀なくされる。激昂しやすく攻撃的だったため薬物検査をしたところ、大麻の陽性反応が出た。


 1ヶ月後に退院するも言動が全く変わっていなかったため、友人たちは入院の意味がないと感じたという。


 そして退院から二週間後、例の事件が起きる。


 なぜ施設職員だった彼が凄惨な犯行を行うに至ったのか? 現代の障害者福祉の問題が浮き彫りになる事件である。


 多くの言葉にならない声を代弁しているのが、Mēdeiaの短歌ではないだろうか。



                山神大知

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