第1話

「『魔法』、この世界に生きる者たちがその身に宿す奇跡の力。その力を行使するにはその身に流れる『オド』と言われる力の源を用いる。魔法には適性があり、適性がないと魔法はつかえない。『魔術』はそれの応用のようなもので、魔法を術式化したもの。基本はものに術式を刻み扱うものである。魔法と違い、空気中のオドでも使用可能。」


手元のメモ帳を口に出して読むリヨリアわ


「…よし、出来た。」


捌いた野ネズミの肉を不腐の葉でつつみ終わる。


「はぁ…村に持っていこう。」


そう呟き、野ネズミの肉をポーチに入れ、立ち上がる。

そのまま、木に立てかけてある狙撃銃を手にし、リヨリアはキャンプ地を後にする。



「あ、治癒草だ。」


村へ行く途中、道端に生えていた薬草の1種を見つける。


「これだと、蕾もないから初級の治癒ポーションしか作れないよね。まぁ、治癒ポーションは不足してたからありがたいけど。買うとなると、初級でも1本5ゴールドするし、ちょっと高いんだよねぇ。」


と、生えていた治癒草を全て取り、ポーチの中に入れる。


「今日はラッキーだなぁ。」


満足気に立ち上がり、村に向かって歩き出す。


「今日は村で少し高いパンでも買おう。」


と嬉しそうに呟くリヨリア。



「いやぁ、全く…学園も人使いが荒いなぁー。」


森の中を気だるそうに歩く青年。


「レッドドラゴンを探せねぇ…」


周りを見渡しながら歩く。


「しらみ潰しに探しても、見つからないよなぁ…」


立ち止まり、 頭を掻きながら困った表情を浮かべる。

その時


ガサガサ


「ん?」


突然、近くの草むらから音がしそちらの方向を向く。

その直後


「ガウッ」


何かが草むらから飛び出してくる。

見た目は黒い狼だが、体のまわりに黒い霧を纏い、目は不気味に赤く輝く生き物。


「…魔物…しかもシャドーウルフ。」


青年はその姿を見るやいなや、剣を抜く。


「少し…運動するかな。」


青年はニヒッと笑みを浮かべる。


「ガウッ!!」


魔物と呼ばれたそれは、青年に向かって走ってくる。


「んじゃ、俺も…」


ダンッ!


青年は右足を前に強く踏み込む。

そして


タッ


地を蹴り、剣を振るう。


「よっと。」


青年は上手く着地し振り返る。

そこには、胴体が上下で真っ二つになっている魔物の死体があった。


「…全然物足りない。」


青年は不満げに剣を鞘に収め、また歩き出す。


「あ、そうだ。近くに村があるから、そこで聞き込みしよう。」


と思いつき、歩く速度を早める。



「はぁ…着いたぁ」


リヨリアは身体を伸ばす

そこは、リヨリアが肉を売りに通ってる村『ココ村』の入口だった。


「…早く売って、早く帰ろ。」


と呟き、村の入口をくぐる。そして、足をとめずにある所へと直行する。


数分後


「すみませーん。」


リヨリアは肉屋を尋ねていた。


「ん?あ、嬢ちゃんじゃねえか。らっしゃい!」


と、店の奥から出てきた店主『ダニエル』がリヨリアだと気づくと、元気よく出迎える。


「今日も持ってきてくれたか?」


「はい、野ネズミの肉を10個と…」


と、ポーチから肉を出し、カウンターに置いていく。


「鹿の肉を1頭分です。」


「おぉ!?鹿の肉とはいいものを持ってきたなぁ嬢ちゃん!」


「え、そんなにですか?」


「そうなんだよ。今は野生動物の肉全般が不足して困ってるんだよ。」


「え…なんでですか?ココ村って狩人雇ってますよね?」


「それが…最近動物が、全然見当たらないらしくてな…嬢ちゃんはどこで見つけたんだ?」


「えっと…キャンプの近くの泉だから…あ、ぶどう農園の東側の大っきい泉です。水をくもうとしたら、綺麗な状態で死骸があったので…」


「死骸?え、これがその肉?鮮度は結構いいように見えるが…」


「それが…死んでからそこまで時間経ってなくて、狩人さんがやったのかなと思ったら、近くに狩人さんがいなくて…そのまま持って帰って来ました。」


「へぇ…運良かったな。」


「はい。」


「んじゃ、代金は…」


(銀貨2枚くらいかな…)


「野ネズミ10匹分で銀貨1枚10ゴールドと鹿肉1頭分で銀貨2枚20ゴール、合計銀貨3枚30ゴールドでいいか?」


「え、そんなにいいんですか?」


予想してた金額より高い金額に驚きの表情を浮かべる。


「当たり前よぉ!不足してる時に持ってきてくれたんだ。野ネズミの金額は変わんねえが、鹿はいつもより10ゴールド高く買い取らせてもらうぜ。本当はもっと渡してやりてぇんだが…」


「いいです!!銀貨3枚で全然ありがたいです。」


「お、そうか。そう言ってもらえると助かる。ほらよ。」


「ありがとうございます。」


代金の銀貨3枚を受け取ると、布製の小袋に入れる。


「気をつけて持ち帰れよ。」


「はい、気をつけます…それでは。」


「おう。またな!明日も待ってるぜ。」


「はい。」


ダニエルの見送りを背に、肉屋をあとにするリヨリア。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る