第1話
「『魔法』、この世界に生きる者たちがその身に宿す奇跡の力。その力を行使するにはその身に流れる『オド』と言われる力の源を用いる。魔法には適性があり、適性がないと魔法はつかえない。『魔術』はそれの応用のようなもので、魔法を術式化したもの。基本はものに術式を刻み扱うものである。魔法と違い、空気中のオドでも使用可能。」
手元のメモ帳を口に出して読むリヨリアわ
「…よし、出来た。」
捌いた野ネズミの肉を不腐の葉でつつみ終わる。
「はぁ…村に持っていこう。」
そう呟き、野ネズミの肉をポーチに入れ、立ち上がる。
そのまま、木に立てかけてある狙撃銃を手にし、リヨリアはキャンプ地を後にする。
◆
「あ、治癒草だ。」
村へ行く途中、道端に生えていた薬草の1種を見つける。
「これだと、蕾もないから初級の治癒ポーションしか作れないよね。まぁ、治癒ポーションは不足してたからありがたいけど。買うとなると、初級でも1本5ゴールドするし、ちょっと高いんだよねぇ。」
と、生えていた治癒草を全て取り、ポーチの中に入れる。
「今日はラッキーだなぁ。」
満足気に立ち上がり、村に向かって歩き出す。
「今日は村で少し高いパンでも買おう。」
と嬉しそうに呟くリヨリア。
◆
「いやぁ、全く…学園も人使いが荒いなぁー。」
森の中を気だるそうに歩く青年。
「レッドドラゴンを探せねぇ…」
周りを見渡しながら歩く。
「しらみ潰しに探しても、見つからないよなぁ…」
立ち止まり、 頭を掻きながら困った表情を浮かべる。
その時
ガサガサ
「ん?」
突然、近くの草むらから音がしそちらの方向を向く。
その直後
「ガウッ」
何かが草むらから飛び出してくる。
見た目は黒い狼だが、体のまわりに黒い霧を纏い、目は不気味に赤く輝く生き物。
「…魔物…しかもシャドーウルフ。」
青年はその姿を見るやいなや、剣を抜く。
「少し…運動するかな。」
青年はニヒッと笑みを浮かべる。
「ガウッ!!」
魔物と呼ばれたそれは、青年に向かって走ってくる。
「んじゃ、俺も…」
ダンッ!
青年は右足を前に強く踏み込む。
そして
タッ
地を蹴り、剣を振るう。
「よっと。」
青年は上手く着地し振り返る。
そこには、胴体が上下で真っ二つになっている魔物の死体があった。
「…全然物足りない。」
青年は不満げに剣を鞘に収め、また歩き出す。
「あ、そうだ。近くに村があるから、そこで聞き込みしよう。」
と思いつき、歩く速度を早める。
◆
「はぁ…着いたぁ」
リヨリアは身体を伸ばす
そこは、リヨリアが肉を売りに通ってる村『ココ村』の入口だった。
「…早く売って、早く帰ろ。」
と呟き、村の入口をくぐる。そして、足をとめずにある所へと直行する。
数分後
「すみませーん。」
リヨリアは肉屋を尋ねていた。
「ん?あ、嬢ちゃんじゃねえか。らっしゃい!」
と、店の奥から出てきた店主『ダニエル』がリヨリアだと気づくと、元気よく出迎える。
「今日も持ってきてくれたか?」
「はい、野ネズミの肉を10個と…」
と、ポーチから肉を出し、カウンターに置いていく。
「鹿の肉を1頭分です。」
「おぉ!?鹿の肉とはいいものを持ってきたなぁ嬢ちゃん!」
「え、そんなにですか?」
「そうなんだよ。今は野生動物の肉全般が不足して困ってるんだよ。」
「え…なんでですか?ココ村って狩人雇ってますよね?」
「それが…最近動物が、全然見当たらないらしくてな…嬢ちゃんはどこで見つけたんだ?」
「えっと…キャンプの近くの泉だから…あ、ぶどう農園の東側の大っきい泉です。水をくもうとしたら、綺麗な状態で死骸があったので…」
「死骸?え、これがその肉?鮮度は結構いいように見えるが…」
「それが…死んでからそこまで時間経ってなくて、狩人さんがやったのかなと思ったら、近くに狩人さんがいなくて…そのまま持って帰って来ました。」
「へぇ…運良かったな。」
「はい。」
「んじゃ、代金は…」
(銀貨2枚くらいかな…)
「野ネズミ10匹分で銀貨1枚10ゴールドと鹿肉1頭分で銀貨2枚20ゴール、合計銀貨3枚30ゴールドでいいか?」
「え、そんなにいいんですか?」
予想してた金額より高い金額に驚きの表情を浮かべる。
「当たり前よぉ!不足してる時に持ってきてくれたんだ。野ネズミの金額は変わんねえが、鹿はいつもより10ゴールド高く買い取らせてもらうぜ。本当はもっと渡してやりてぇんだが…」
「いいです!!銀貨3枚で全然ありがたいです。」
「お、そうか。そう言ってもらえると助かる。ほらよ。」
「ありがとうございます。」
代金の銀貨3枚を受け取ると、布製の小袋に入れる。
「気をつけて持ち帰れよ。」
「はい、気をつけます…それでは。」
「おう。またな!明日も待ってるぜ。」
「はい。」
ダニエルの見送りを背に、肉屋をあとにするリヨリア。
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