第33話 ケリをつけないと~ルドルフ視点~
「アメリナ?」
「あの、ルドルフ様。その…ルドルフ様が入って来る直前に、クレア様に言ったことは、その…」
何やらアメリナが赤い顔をしてモジモジしている。一体どうしたのだろう。ただ、その姿が可愛くて、つい強く抱きしめてしまった。
「アメリナ、何を恥ずかしがっているか知らないが、俺が入って来る直前の会話は残念ながら聞こえなかったのだよ。ただ、あの女が言いがかりをつけて殴りかかって来たのだろう?俺のせいで本当にすまない」
「ルドルフ様のせいではないですわ。よかった…あのことは聞かれていなかったのね…」
「アメリナ?」
「いえ、何でもありませんわ。助けていただいてありがとうございました」
「君が礼を言う必要はないよ。それよりもまたあの女が押しかけてくると大変だ。もう少しだけアメリナの傍にいてもいいかな?」
「ええ、もちろんですわ」
その後アメリナと一緒にお茶を楽しんだ後、夕食までご馳走になった。今回の件で、なぜかアメリナの両親やアラン殿に感謝をされたが、俺は感謝される立場ではない。早くあの女をなんとかしないと!
翌日、あの女を呼び出した。
「クレア嬢、昨日はよくもアメリナにあんな酷い事をしてくれたね。そもそもどうして君は、そんなに俺に執着するのだい?」
「執着だなんて…私は美しくて聡明で、いつも冷静なルドルフ様が大好きなのです。あなたこそ、私の理想の男性ですわ」
何を思ったのか、気持ち悪い顔で俺をうっとりと見つめている。
「俺が理想の男性か?ねえ、今日俺の家に来ないかい?いいものを見せてあげるよ」
「まあ、ルドルフ様の家にですか?それは嬉しいですわ。ぜひお伺いします。ご両親にも挨拶をしないと。そうだわ、王都で有名なお菓子を買って参りますわね」
「両親には会わないから、そんなものはいらないよ。それじゃあ、我が家で待っているから」
そう伝えた。
そして放課後、アメリナを屋敷に送り届けた後、あの女が来るのを待つ。すると
「坊ちゃま、クレア嬢がいらっしゃいました」
「わかったよ、それじゃあ、俺の部屋に通してくれ」
「あの…よろしいのですか?」
「ああ、構わない。すぐに連れて来てくれ」
「かしこまりました」
ゆっくりお茶を飲みながら、あの女が来るのを待っていると
「ルドルフ様、こんにちは。まさかルドルフ様のお部屋に通してもらえるだなんて嬉しいですわ。あら?一体何を見ているのですか?」
嬉しそうに俺の元にやって来たあの女が、大きなモニターに気が付き、こちらにやって来た。ただ、次の瞬間、固まっている。
「このモニターは、アメリナの今の様子を映しているのだよ。ただ、あまり画像が良くないだろう?それにアメリナから見た視点だから、俺の可愛いアメリナの顔が見えないのが難点だな…もっと精度が高く、アメリナの顔がいつでも見られるものを準備しないと…」
ニヤリと笑い、あの女に話しかけた。
「今アメリナは、サーラ嬢の家にいるみたいだね。勝手に出かけるだなんて、悪い子だと思わないかい?さて、どんな罰を与えようかな?ねえ、クレア嬢、アメリナの罰はどんなものがいいと思う?」
「ルドルフ様…このような事をして、ずっとアメリナ様を監視なさっているのですか?まさか昨日、あなた様がやって来たのも」
「そうだよ…俺はアメリナが再び他の男に興味を示さないか、不安でたまらないのだよ。まさか昨日、君がアメリナの家に乗り込んでくるだなんて思わなかった…そうそう、もっと素敵な物を見せてあげるよ」
本棚を移動させ、隠し扉のドアを開けた。我が家には、万が一強盗等が押し入った時、安全に身を守れる様に、隠し扉から外に出られる様になっている。さらに隠し扉の奥には部屋もあり、そこで身をひそめる事が出来るのだ。
「こっちだよ、さあ、おいでよ」
完全に固まっているクレア嬢を無理やり引き連れ、奥の部屋へと向かった。部屋に入った瞬間…
「きゃぁぁ!何なのですか?この部屋は!」
クレア嬢が悲鳴を上げたのだ。
「何って、俺のとびっきりの部屋だよ。どうだい、どのアメリナも可愛いだろう?こっちの奥の部屋は、もしアメリナを他の男に奪われたときに、取り返して監禁しておくために準備した場所なんだ。でも、もう必要なくなっちゃったけれどね」
ニヤリと笑ってクレア嬢に近づく。
「君がどうしても俺と結婚したいというのなら、この部屋で監禁してあげようか?」
「い…いや…来ないで。この変態!」
そう叫ぶと、物凄い勢いでクレア嬢が部屋から出て行った。この程度で怖気づいてしまうだなんて、あの女、大したことなかったな。でもこれできっともう、俺に付きまとう事はないだろう。
この部屋の良さが分からないだなんて…
やっぱりこの部屋が一番落ち着くな。
アメリナもいつかこの部屋に連れてきてあげよう。もちろん、俺から逃げられなくなったタイミングで…
※次回からアメリナ視点に戻ります。
よろしくお願いします。
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