第32話 アメリナに文句を言いに行くだなんて~ルドルフ視点~

アメリナを家まで送り届けた後、自分の家へと戻ってきた。


「坊ちゃま、おかえりなさいませ。注文しておりましたピアスが届きましたよ」


「ありがとう、早速これを明日アメリナにプレゼントするよ。それから、あの女の動きはどんな感じだい?」


「特に目立った動きはありません。引き続き、監視いたします」


「ありがとう、よろしく頼むよ」



ブルーダイヤで作られたピアスを手に取った。アメリナの行動を監視するために作らせた、特注のピアスだ。このピアスには居場所が特定できる機械が設置されているのだ。さらに、片方ずつそれぞれに録音と録画機能が備わっている優れもの。これさえあれば、アメリナの行動が手に取る様にわかるのだ。


これで万が一アメリナに近づく男がいても、すぐに察知できるはず。


翌日、早速アメリナにピアスをプレゼントした。アメリナの耳に自らピアスを付ける。俺自ら付ける事で、俺以外の人間がこのピアスを取る事は出来ない。これでアメリナの行動は、手に取る様にわかるようになったぞ。


この日もアメリナを送り届けた後、ちゃんとピアスが起動しているか確認する。そう、あくまでも確認だ。


すると


“お嬢様、クレア様がいらしております”


“クレア様が?わかったわ、すぐに行くわね”


何だって?どうしてアメリナの家に、クレア嬢が来ているのだ!こうしちゃいられない、すぐに俺も向かわないと!


馬車に乗り込み、アメリナの家を目指した。あの女、一体何をしにアメリナの家に来たのだ?一気に不安が襲う。


すると


“アメリナ様、単刀直入に申します。どうかルドルフ様を諦めて下さい。お願いします”


画質は悪いが、どうやらあの女がアメリナに頭を下げている様だ。やはり小さなピアスに、録画機能が付いた器具を付けるのは無理があったか!それでも音声はしっかり聞こえる。


“諦めてくれとおっしゃられても…”


“あなた様はグリーズ様を好きだったのでしょう?でも、親友に取られてしまったから、優しくしてくれるルドルフ様に甘えているのでしょう?そもそも、ルドルフ様はずっと私と恋仲だったのです。それをあなたが横から奪い取ったのですわ!”


この女、大嘘を付いて。俺とあの女が、いつ恋仲だったというのだ!


“ルドルフ様からは、クレア様とは何にもないとお伺いしております。それに私は、グリーズ様の事は元々何とも思っておりませんでしたわ”


“それはどうかしら?よく2人きりで会っていたじゃない。それにずっとルドルフ様を無視していたし。それなのに、今更私からルドルフ様を奪うだなんて…酷いですわ。私はずっとルドルフ様が好きだったのです。両親もルドルフ様の元に嫁げるように、ルドルフ様のご両親に話しをして下さいましたの”


俺の両親に話しを?そんな事は聞いていないし、たとえ話があったとしても、間違いなく断っている。


“そんな…でも、ルドルフ様のご両親は、私との婚約を望んでいると伺っておりますわ”


“あら、普通に考えて、伯爵令嬢のあなたを嫁に向かえるよりも、侯爵令嬢の私を嫁に向かえた方が、ルドルフ様のご両親も嬉しいでしょう。現に既に親同士、話しが付いておりますの。ですので、どうかルドルフ様の事は、諦めて下さいませ”


この女、何を好き勝手言っているのだ!体中から怒りがこみ上げて来た。と同時に、アメリナの家が見えて来た。急いで馬車から降り、アメリナの家へと向かい、2人がいる客間のドアを開けると



「あなた何を言っているの?この前までルドルフ様を無視していたじゃない。それなのに、どうしてよ!」


何を思ったのか、アメリナを叩こうとしているクレア嬢の姿が。


「アメリナ!!」


アメリナをおもいっきり抱きしめた。その瞬間、あの女の手が俺の肩に当たった。どうやら俺の可愛いアメリナの頬を叩こうとしていた様だ。よかった、間に合ったのだな。


「ルドルフ様、どうしてここに…」


「すまない、アメリナが心配で…それよりもクレア嬢。話は聞かせてもらったぞ!既に俺たちの結婚話が進んでいるとはどういう事だ!家の親はアメリナが嫁いでくるのを、とても楽しみにしているのだぞ!」


「いえ…その…それは…」


「アメリナの家にまで押しかけてきて、こんな嘘まで付くだなんて、一体どういうつもりだ!いい加減にしてくれ。俺はずっと君の事が嫌いだと言っているだろう。君と結婚するくらないなら、一生独身でいる。いいや…アメリナと結婚できないのなら、一生独身でいようと思っている。これ以上俺からアメリナを奪おうとするのなら、容赦しないぞ」


クレア嬢に向かって、怒鳴りつけた。すると、ポロポロと涙を流しながら


「どうしてですか?私の方がこの女よりもずっと美しいし、爵位も上ですわ。私は絶対に諦めませんから」


そう吐き捨て、そのまま部屋から出て行ったのだ。


「アメリナ、嫌な思いをさせてしまって、本当にすまない。怪我はないかい?あの女に何か酷い事をされなかったかい?」


俺のせいで嫌な思いをさせてしまって、本当に申し訳ない事をしてしまった。そんな思いで必死にアメリナに話し掛けたのだが、なぜか赤い顔をして俯いている。

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