嫌われていると思って彼を避けていたら、おもいっきり愛されていました

第26話 あなたは何を言っているのですか？

その時だった。遠くで両親と一緒にいるルドルフ様の姿を見つけた。今日は夜会に参加している様だ。それにしてもルドルフ様、随分とやつれている。それに目もうつろだ。

その時だった。ルドルフ様と目があったのだ。ニヤリと笑ったルドルフ様が、まっすぐこちらにやって来た。

ただ、そのタイミングでサーラのお父様の挨拶が始まったのだ。皆が一斉に、サーラ達の方を向く。もちろん、私も向いた。

「皆様、今日は我が娘、サーラの為にお集まりいただきありがとうございます。サーラは無事15歳を迎えました。今日でサーラは婚約を結べる年齢になったのです。そこで今日、皆様に重要なお知らせがあります」

サーラのお父様の言葉で、グリーズ様とファンタム侯爵夫妻が隣にやって来たのだ。いよいよ婚約発表が始まるのね。

「本日、娘のサーラは、こちらいらっしゃるファンタム侯爵家の嫡男、グリーズ殿と正式に婚約を結ぶことになりました。まだまだ未熟な２人ですが、どうか温かく見守って頂ければ幸いです」

サーラのお父様の言葉で、関係者が一斉に頭を下げたのだ。周りから一斉に拍手が沸き起こった。私も嬉しくて笑顔で拍手をする。サーラもグリーズ様も、本当に幸せそうでよかったわ。

その時だった。

「どうしてだい？グリーズ殿は、アメリナを愛していたのではないのかい？あり得ない…」

なぜか私の隣まで来ていたルドルフ殿が、プルプルと震えながら何かを呟いている。そして、挨拶を終えたばかりのグリーズ様達の方に向かって歩き出したのだ。

「グリーズ殿、どういう事だい？どうしてサーラ嬢と婚約をしているのだい？君はずっと、アメリナの事を好きだったのではないのかい？もしかして、アメリナの事を弄んでいたのかい？ふざけるな！アメリナが今、どんな気持ちでいるか…」

なぜか今にも殴りかかりそうな勢いで、グリーズ様に詰め寄っている。一体何を言っているの？

「ルドルフ殿、落ち着いてくれ。アメリナ嬢を弄んだとは一体どういうことだい？」

「何をとぼけているのだ！君とアメリナは、２人で仲睦まじくしていたじゃないか。アメリナはずっと、君の事を思っていたのだよ。それなのに君は！まさかアメリナの親友に手を出すだなんて！」

ん？ちょっと待って！ルドルフ様は何を言っているの？周りも騒めいている。これはマズイわ。

「ルドルフ様、落ち着いて下さい。一体何をおっしゃっているのですか？私はグリーズ様の事なんて、何とも思っておりませんわ」

完全に興奮状態のルドルフ様を、必死に止める。

「何を言っているのだい？だって君たち、あんなにも楽しそうに２人で話をしていたではないか…だから俺はてっきり、アメリナはグリーズ殿の事を好きなのかと…」

もしかして、ルドルフ様もサーラと同じように、変な勘違いをしていたの？

「グリーズ様はずっと、サーラを愛していらしたのです。私もグリーズ様ならサーラを幸せにして下さると思い、２人の恋に協力していただけですわ。ただ…私の軽率な行動のせいで、変な誤解を与えてしまったのですね。申し訳ございません」

「アメリナ嬢が謝る事ではないよ。僕もちょっとアメリナ嬢を頼りすぎていたところがあったからね。でもまさか、僕とアメリナ嬢が恋仲だなんて思われていただなんて…サーラ、僕が愛しているのは、サーラただ１人だ。信じてくれ」

「ええ、もちろん信じておりますわ。アメリナからも、そう聞いております。私の為に、アメリナが色々と動いてくれていた事も。アメリナ、あなたには本当に感謝しているわ。私とグリーズ様をくっつけてくれたのは、まぎれもないアメリナだもの。本当にありがとう」

「サーラ…」

ギュッとサーラを抱きしめた。

「皆様、お騒がせして申し訳ございません。私とグリーズ様は、ここにいるアメリナのお陰で、結ばれることが出来たのです。アメリナは私の事で、グリーズ様の相談に乗ってくれていただけです」

サーラが大きな声でそう宣言したのだ。

「グリーズ殿、サーラ嬢、変な勘違いをしてすまなかった…アメリナ、本当にグリーズ殿の事は、興味がないのかい？」

「ええ、もちろんですわ。グリーズ様は大切な友人の１人です。ただ、これからはもう少し行動には気を付けます」

「ルドルフ殿が僕を鬼の形相で睨んでいたのは、そう言う事だったのだね…」

鬼の形相で睨んでいた？一体どういう事かしら？

「ルドルフ、お前は一体何をやっているのだ？グリーズ殿、サーラ嬢。それから、ファンタム侯爵・夫人、クレステイード伯爵・夫人。息子がとんだ騒ぎを起こして、本当に申し訳ありませんでした。ほら、ルドルフも謝りなさい」

ルドルフ様のご両親が飛んできて、頭を下げたのだ。

「変な誤解をして、申し訳ございませんでした」

ルドルフ様も頭を下げている。

何とか事態は落ち着いた様だ。