嫌われていると思って彼を避けていたら、おもいっきり愛されていました

@karamimi

第1話 大好きな人に嫌われていた様です

「サーラ、ルドルフ様はどこにいるのかしら?せっかく、美味しいお菓子を準備してきたのに」


「アメリナったら。毎日毎日、ルドルフ様を追いかけて。大体同じクラスなのだから、その場で渡せばいいじゃない」


「そうなのだけれど、教室で渡したらそれで話題が尽きちゃうじゃない。放課後に渡せば、そのまま一緒にお茶が出来るでしょう?」


今日も大好きなルドルフ様を探すため、親友でもあるサーラと一緒に中庭へと向かう。私、アメリナ・シャレヌンは、伯爵令嬢で14歳。3ヶ月前に貴族学院に入学したばかりだ。


そして私が探しているのは、侯爵令息のルドルフ・ダーウィズ様。青色の髪に水色の瞳をした、とても美しい男性なのだ。実は私とルドルフ様は幼馴染で、子供の頃はずっと一緒にすごした。


私に意地悪をする令息たちがいると、すぐに駆け付け私を守ってくれたルドルフ様。私がピンチの時には、まるで騎士様の様に守ってくれるその姿に、私は次第に彼に惹かれていった。


“アメリナは俺が守るから”


そう言ってほほ笑んでくれるルドルフ様が、大好きだった。でも…


年齢を重ねるにつれて、ルドルフ様は次第に私に冷たくなったのだ。さらに美しい容姿に加え、勉学も武術にも優れているうえ、侯爵家の嫡男という事もあり、令嬢たちからの人気も高くなっていった。


焦った私は、少しでもルドルフ様に近づきたくて、今必死に猛アプローチをしている。大丈夫、私達には子供の頃からの絆がある、そう信じて…


「アメリナ、居たわよ。ほら、あそこ」


サーラが教えてくれた方を見ると、確かにルドルフ様の姿が。他の令息たちと話をしている様だ。急いで彼に近づこうとした時だった。


「俺はあんなうるさい女、大嫌いだ。何をどうしたら、俺とあの女が婚約する話になるんだ!あの女と婚約させられるくらいなら、一生独身の方がいい!」


いつもクールなルドルフ様が声を荒げたのだ。あのうるさい女って…


「悪かったよ。でも、よく一緒にいるから、仲が良いのだと思って…」


「大きな声を出してすまなかった。ただ…僕はあの女に付きまとわれているだけだ。はっきり言って、迷惑以外なにものでもない」


いつものクールなルドルフ様に戻ったと思ったら、心底嫌そうにそう吐き捨てたのだ。


いつも付きまとっている?

うるさい女?



「大丈夫?あなた、物凄く顔色が悪いわよ。その…なんて言ったらいいのか分からないけれど、気を確かに持って」


フラフラとその場を後にする私に、サーラが声をかけてきてくれる。どうやらサーラも、ルドルフ様がおっしゃっていた令嬢は、私のだと思ったのだろう。


私は確かにいつもルドルフ様に付きまとっていた。その上、いつも一方的に話し掛けていたのだ。そうか、ルドルフ様は、私の事が大嫌いだったのね…


だから私を冷たくあしらっていたのだわ。それなのに私ったら…


「ごめん、サーラ。今日は帰るわ…ちょっと体調が良くなくて…」


「それなら、お屋敷まで送るわ。今のあなたを1人にしておくのは心配だから」


「ありがとう。でも、大丈夫よ。それじゃあ、また明日ね」


「本当に大丈夫?とにかく馬車までは一緒に行きましょう」


サーラが心配して、我が家が停まっている馬車まで一緒について来てくれた。


「私の事を心配してくれて、ありがとう。それじゃあサーラ、また明日」


「アメリナ、どうか元気を出して。私はあなたの弾ける様な笑顔も、元気な笑い声も、全部大好きよ。だから、その…」


「私の事を気にかけてくれて、ありがとう。あなたは私の最高の親友よ。それじゃあ」


まだ心配そうなサーラに向かって笑顔を作ると、そのまま馬車に乗り込んだ。


馬車に乗り込んだ瞬間、一気に涙が溢れ出す。


「あそこまでルドルフ様に嫌われていただなんて…私、何をしていたのかしら…」


思い返してみれば、私はいつも自分の事ばかりで、ルドルフ様の事なんて気にかけていなかった。ある日を境に、ルドルフ様が私に冷たくなった時も、令嬢でもある私と話すのが恥ずかしくなったのね、なんて呑気な事を考えていた。


でも、ルドルフ様はきっと、あの時には既に、私の事が大嫌いになっていたのよね。それなのに私は、ルドルフ様に付きまとい、いずれ私とルドルフ様は婚約するものだと、勝手に思っていた。


我が国では15歳になると、婚約を結ぶことが出来るのだ。近年は家同士のつながりではなく、本人同士の意思を大切にして婚約を結ぶ。さすがに平民と貴族は結婚できないが、貴族同士なら身分をそこまで気にせずに結婚する事が出来るのだ。


あと9ヶ月待てば、私もルドルフ様と婚約できると思っていた。


でも…


あそこまで嫌われていたら、私とルドルフ様との婚約は、きっと絶望的だろう。


どうしてこんな事になってしまったのかしら?昔は間違いなく、お互いを思いやっていたはずなのに…



~あとがき~

新連載始めました。

よろしくお願いしますm(__)m

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