第19話 悪い取引ではないでしょう
「どこが」
「イチャついているというのだ!!」
「その息の合い方とかでしょうか。そもそも廃墟に来るのなんかカップルのやることでしょう。幽霊を捕まえるなんて言い訳が雑過ぎると思いました」
してやったりみたいな顔してるけど、たとえそうだったとしても全裸で尻叩きに来てる奴よりマシだからな!!
「カップルなわけねえだろ!! 三色団子布団だぞ!!」
「そう強く否定されるのも気にくわないのだが!!」
「またイチャついていますね……」
「イチャついてねえ!!」
「イチャついてなどいない!!」
すると、委員長がニヤニヤと笑い出した。
口の両端が上がって半月状になるほどの笑み。
目もどこを見ているかわからず、正気の色が無い。
明らかに異常だ。
まさか――
「お、おまえ、幽霊に憑りつかれて――」
「失礼ですね。素の笑い方です」
「余計やべえよ!!」
「とにかく、お二人は付き合ってはいないのですね?」
「ああ」
再び、妙な笑い方をする委員長。
「では、ちょうどいい。私と付き合いませんか?」
「はぁ!?」
「ファーーーーーーーーー!!」
突然の発言に、頭が真っ白になる。
えっ、何?
いま、えっと、その。
「なななななななななななななななな! 何を言っているんだ古田門那珂!!」
「そっ、そうだぞ!?」
「私もボディガードが必要だと思っていたところです」
「え?」
「心霊スポットとはここのように廃墟ですから、治安が良くはありません。身の危険を感じたこともあります。しかし、貴方の屈強さがあれば恐れる必要もない。それに、布団まで用意した女と夜中に逢引きという、スーパー据え膳シチュエーションでも手を出さないヘタレさ……完璧な人材です」
「単なる護衛役ってことじゃねーか!!」
「そうだぞ!! 何て身勝手なことを言い出すんだい!!」
「それはお前も同じだ!!」
助手かボディガードかの違いしかねえじゃねえか。
モテ期が来たかと思った自分が情けなくなるわ。
いや、廃墟で全裸絶叫する人から言われてドキッとした自分もどうかと思うけどな!!
「悪い取引ではないでしょう? 貴方は全裸が見れる。私は安全に全裸になれる」
「なんでそんなに自信満々なんだよ……」
「なぜ乗ってこないのです? 客観的に見て、なかなかいい体をしていると思いますよ? 鍛えていますから」
それは否定できない……。
グラマラスという言葉を使うと陳腐に聞こえるが、彼女の言葉通り、第三者視点で見ても、グラビアアイドルのように見事な体型だ。
気にならないと言えば噓になる。
いや、気にならないなんて言葉は、体裁を気にしてのものだ。
だが、それに乗っかるってことは、男子高校生が一番いやな「エロ野郎」のレッテルを貼られるってことなんだよ。
エロ全開で生きている蒟蒻山の仲間入りなんだよ。いや、開き直れるアイツすげえな……。
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