本文


 地頭が良いと言う言葉を皆さん聞いたことがあるだろうか。言い換えるならばその人が持っている天性の才能。それをがあることを地頭が良いと言う。僕はそのちょうどその対義語に位置するような人間だ。


 成績は下から数えた方が速く、どんなに努力しても漢字や文法が覚えられない


 努力だって報われない。


 きっと僕みたいな人を、不良品と言うのだろう。



×+×+×+×+×



 今日は学校に行く成績だって何だって取ることができない。僕には先生からの授業態度だけを貸すことができなかった。


 靴箱に靴を入れた布とその靴を見てまた憂鬱になる。この靴にはまた何かいたずらが仕掛けられたりするのだろうかまた画鋲や石が突き詰め敷き詰められるのだろうか



×+×+×+×+×



 授業が終わり、放課後になった学園祭が近いので、放課後にも残って作業していかなければならないのだが、クラスメイトのほとんどは残ることなどなかった。部活動のあるものは仕方ないとしよう。それでも、暇な人間のそのほとんどが来てくれることはなかったし、冷やかし位でしか用はなかった。さらに他の子たちは家の手伝いと何なりと忙しいでは、誰がこの作業を進めることができるのか。もはや僕しかいないのだろうか。


 また憂鬱に浸っていた。



×+×+×+×+×



 僕が最終下校時刻まで文化祭の準備をし、チャイムが鳴っていたので急いで帰ろうと学校の校舎裏を通ると、そこには何やら話し込んでいる気配があった。うかいして帰ろうとすると1つ何やら聞き慣れた声があったので少し聞いてみることにした。


「俺と付き合ってくれ!」


「ご、ごめんなさい。私も心に決めた人がいるの。」


「一体、誰だよ。顔も、頭も、性格も、全部俺にはあるだろうが。一体、誰だ。」


「私は、何よりあなたが嫌い。」


 その瞬間だった。突如、彼女に拳が向けられた。

 僕は、すぐに動いていた。


 ドゴォ


 拳が顔に当たり、変な音がする。きっと、怒りに任せて行なった全力の拳だろう。

 それは、僕を吹き飛ばすには、十分すぎるほどだった。


「ちっ」


 舌打ちをして、奴は去っていった。


「だ、大丈夫?」


「ありがとう…」


 お礼を言って立ち上がる。


「話…聞いてたんだね。」


「う、うん…」


 あの時は咄嗟だったから考えていなかったが、そう言えば、そうだった。


「あのね、私が好きなのはね、あなたなんだよ。」


「っ⁉︎」



 彼の運命は、ここで大きな転換期を迎えた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る