第23話 SNSに不審な動き
オレたちはその後、大学の敷地内にあるベンチに向かった。
ベンチの先には噴水があり、水が太陽の光をきらきらと反射させている。
木製のベンチに座る。
すると、隣に座った柊が顔色を悪くしていることに気が付いた。
「大丈夫か?」
「ちょっと怖かった……」
と、柊は夏だというのに両手をこすりあわせながら言った。
隣に座っていると、柊の白い胸元が目に入った。
オレは悪いと思って、目線を外す。
「変な話だったな。とりあえず、考えてみるか」
オレが言うと柊はうなずいた。
「これまでの話を総合すると、桑名も田中も同じような状況に陥っていた。どちらも深い孤立感と追い詰められた感覚を抱えていたようだ」
「そだね。彼らが感じた恐怖や孤立は、なんとなく共通している気がするね……。特に田中さんが一人で何かに話しかけていたっていうのは、すごく気になる。幽霊……いるのかな」
「すまん。前にオレが言い出したことだけど、そういった超常返照はないと思うよ」
もしマクドゥーガルの実験が示したように、魂に質量があるとしたら、あるかもしれないが。
「だってさ……魂ってあるかもしれないじゃない」
「ないっていうのが、世間の一般的な考え方ではあるよ」
「……そうだけどさあ」
柊は不満そうだった。
「他の共通点は……ChatAIか」
「ChatAI? たしかに田中さんは研究に使ってたみたいだけど。桑名は使ってなくない?」
「いや、使っていたよ。ChatAI。勧められたからね。まぁ田中が使っていたものと同じだとは限らないけど」
少なくとも桑名が使っていたChatAI『ミライコ』はかなり高性能で、信頼できるものだ。
「それとあとは心理学の専攻をしていること。人間の感情や行動、意思決定に関する研究をしていることか」
「心の声を聞きすぎて、おかしくなっちゃったとか……」
「それだったら心理学専攻の人たち全員がまずくないか?」
「むー」
「確定情報で言えば、こんなところか?」
精神状態がおかしくなっていたこと。
『彼ら』と呼ぶものに怯えていたこと。
独り言が増えていたこと。
周りを疑っていたこと。
心理学の専攻。
研究内容。
自殺したこと。
「これくらいか」
「……うーん。全然わからないや」
「他にも情報があればいいんだが」
「あ! SNSあたりに何か書き込んでいないかな」
柊がそう思いついた。
「見てみよう」
オレはスマホを取り出し、SNSを確認する。
フォロー人数2、フォロワー4というオレのアカウントが出てくる。
……4?
柊と桑名しかいなかったはずだが。
見れば、二人フォロワーが増えている。
『Miki@オフパコ希望』さんと『せれん@ムラムラ中』さんだ。
……いったい誰だ?
もしかしたら、同じ大学の人かもしれない。
オレと友達になりたい可能性があるな。
そう思ってオレは柊に聞いてみた。
「なあ柊さん。ちょっといいかな」
「どしたの? 慧くん」
「この人たち、知ってるか?」
そう言って画面を柊に見せると、彼女は「ぶ」と吹き出した。
「慧くん! だめです。ブロックしなさい!」
そう言って横からオレのスマホを触って、その二人をブロックしていた。
「……そんなに危険な人たちなのか?」
「詐欺ですよ詐欺」
「…………そうか」
「……なんでちょっと落ち込んでるの」
「いや」
オレはそう言って通知欄を開いた。
知らないアカウントからリプライをつけられていた。
『これ以上嗅ぎまわるな。お前が何をしようとしているか知っているぞ』
というものだ。
日付は今日。三時間くらい前についたばっかりだ。
「……柊さん。これ」
そう言ってオレは柊に見せた。
不可解だ。
これは桑名の件についてか?
なぜオレが調べていることを知っている?
それ以上に、なぜオレのアカウントを知っている?
ほとんど動いていないオレのアカウントを知っている人間なんて、ほとんどいないはずなのに。
「なにこれ……。気持ち悪い。捨てアカウントだし、誰がこんなのを……」
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あとがき
ここは読み飛ばしてくださって結構です。
ここまでお読みいただきありがとうございます。
カクヨムコンというコンテストに出させていただいております。
よろしければ、★やフォローでの応援をよろしくお願いいたします。
この作品はフィクションであり、実在の人物・団体などには何の関係もありません。
なお作中で行われている行為は現実で行うと犯罪として処罰されるものがあります。
絶対に真似しないでください。
もちぱん太朗。
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