第3話 秘密
白龍には秘密があった。
未だかつて誰にも言ったことがない秘密が。
言ったことはないが、巻物に記したことはある秘密が。
誰にも知られたくない。
誰かに知ってほしい、かもしれない。
想いのせめぎ合いは、およそ二百三十年間続いた。
ひっそりと一匹で秘密の世界を構築し続けた。
あれどうして秘密にしているんだっけ。
ああそうか禁じられているからだよ。
一匹でノリツッコミすることもあった。
悲しくなる時もあった。
誰かと共有したい、誰かに見せたい、いや誰にも見せなくていい、一匹でひっそりと楽しめばいい。
想いのせめぎ合いは、およそ二百三十年間続いた。
「私を秘密の世界へ連れて行ってください」
待ちに待ったのか、待っていないのか。
漸く読まれた巻物、暴かれた秘密。
よりにもよって、道士だった。
仙人ならばよかったのだ。
制約が解かれる仙人ならば。
よりにもよって、道士。
駄目だ。秘密の世界に連れて行くわけにはいかない断じて。
どれだけ頼まれようが。
どれだけ道士の大好物である干し柿を贈られようが。
駄目なものは駄目だ。
制約が課せられている道士を秘密の世界に連れて行くわけにはいかない。
白龍は仙界を見守る存在。
制約に厳しい存在なのだ。
道士に制約を破らせるわけにはいかないのだ。
(2024.1.31)
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