女子高の『王子様』と呼ばれている美少女に俺は知らぬ間に関わっていたらしく、また知らぬ間に好かれていた
九条 夏孤 🐧
夏休み前編
第1話 趣味
俺の名前は
小学生はもちろん勉強せず。中学生も塾に通わず。受験なんて自頭で無理矢理乗り越えてきた。そして今、高校生になった俺も極力勉強を避けている。
「
その結果がこれだ。
学校とは恋愛部活も大切だが、何よりも教育機関であることを忘れてはいけない。むっずい定期テストが終われば、赤点民に追試という地獄のような試練が与えられる。さらに、全国模試では生徒の点数を全員確認してすぐにランキング形式で結果が配布される。
最下位まで乗せる意地の悪い高校なもんで、俺の最悪な点数まで全学年に知れ渡ってしまうのだ。その結果、他をどう頑張ろうとも勉強がそぐわないために毎日のように「慶人って残念だよな」と言われるのだ。
「これだから更に勉強が嫌になるんだよな、授業サボりてー」
高校一年生からここまでスタートダッシュを滑った生徒は見たことが無いと、物理の先生に笑われたものだ。ダサいポイントはここだけでは収まらない。追加で、慶人は帰宅部という点だ。友達がいないわけではないが、交流関係は必然的に狭い。共学ではあるものの女子との関り全くなし。こんな感じで俺の学校生活はすでに終わっている。
「……いや、確かに学校生活は終わってるな。でも俺には放課後には宝に等しい時間が余っているんだ」
放課後の時間、それは俺にとって唯一の居場所だ。学校なんてテキトーに終わらせてすぐに帰宅。それからスケボー、カラオケ、ボーリングやゲーセンに立ち寄ったりするなど様々な活動に時間を注ぐのだ。
「慶人って帰宅部だけど何かスポーツとかやるん?」
「スケボーとかよくやってる」
「ププッ!絶対カッコつけてるだけだろww転んで頭打って更にバカになっても知らないぞ」
こーれーだーかーらー陽キャ男子は困るのよ。人の話を蔑ろにして会話発展させるとか全く楽しくないんだよなあ。反論させてもらおう、陰キャにとってもスケボーは至高である!
でも現状、俺の放課後の趣味に誰も納得していないのは明らかである。友達からも怪訝な顔をされるし、親からは勉強しなさいと言われる始末。やはりダサいと言われる。
それでも俺は他人の意見を半場無視しながらやり過ごしている。今日も俺は放課後を十分謳歌するつもりだ。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
午後四時、向日葵からし公園に俺は右手に水筒をぶら下げてスケボーで意気揚々と向かった。
心なしか緊張する、なにせ今日こそはレベルの高いスピン系の技を成功させようとしているからだ。向日葵からし公園は名前こそフザけているものの、市の中で最も大きい公園であり、中央に噴水が設置されている大広場があることからスケボーに最適な空間なのだ。他のスケーターにも出会うため、結構参考にさせてもらっている。
公園の入り口を抜けるとすぐに中央の広場に着いた。相変らず真ん中に大きい噴水があるだけで、後は石造りの地面が広がっているだけである。
寂しい空間を見渡してみるに、奥の方にポツンと誰かがスケボーをしている姿が見受けられた。
既に先客がいるのか驚いた。この時間帯は仕事とか、学校で忙しいから最近は誰も居なかったんだよな。
興味本位で近付いてみると、段々と服装がくっきりと見えてきた。ちょっとダボついている明るいジーンズに黒色のパーカーそして紺色のお洒落なアウター。どうやら黒色のキャップをかぶっており顔は全く見えない。ちなみに高身長。
この少ない情報源の中でも俺はある事に気付いてしまった。
「……めちゃくちゃカッコええやん」
その人の醸し出す雰囲気が、すでにカッコいい。マスクを着けていて素顔は分らないが、スラッとしたイケメン男子的な?いつもダサいと言われている俺だからこそ彼の聖のパワーを敏感に感じ取っているのかもしれない。
「よっと♪」
そんな俺に見られている状況でも全く気にせずに彼はスケボーにひょいと乗った。
それからプッシュという技で勢いをつけると、高速でターンを右左に入れ替え、チクタクも簡単にこなし、方向転換する。さらには前輪後輪を交互に浮かし余裕の表情を見せる。
俺でもできる技だが、人によってここまで技が違って輝くように見えたのは正直ショックを受けた。俺なんてどれだけ頑張れどy周囲から「ナメクジ走行」っていうレッテル貼られるだけ……。
その後に彼はターンでいくらか角度を調節、それからの今度はスピードを制御した。そしてすぐに身を少し屈めて、後ろ足に体重をかけ、用意をする。順番で言えばオーリーというジャンプする技をする予定なのだろう。その後彼は思いっきりデッキという部分を弾いた。
……お、遂に飛ぶのか。
感心した様子で俺は彼の動きを眺めていた。スケボーが華麗に舞い綺麗な垂直型になる。これから湾曲を描き元の姿勢に戻るのだろう。これは完璧なオーリー決まったのか?っと思われたその時、弾く力が強すぎてなのか、急にスケボーの勢いが地面に吸収され止まってしまう。……そして彼は背中から地面に打ち付けてしまったのだ。
「えぇ?!だ、大丈夫か??」
高く飛べはしたものの、勢い余って背中から垂直落下。
俺は半分パニックになりながら急いで駆け寄った。なにせ、自分が転ぶのと感覚は違う。俺は「背中とか色々重要な神経通っているらしいし、万が一の場合、救急車を呼ぶ必要があるのでは??」とか思考を張り巡らせながら安否を尋ねた。
「体で動かせない部位とかある?」
「……別にボクの事は気にしなくていいよ。失敗したのは初級技だし」
しかし、帰ってきた答えは案外素っ気なかった。まるで誰にも頼りたくないと言わんばかりな態度。そんな彼の目は痛みで強張っていた。そんな状況なのでこればっかりは彼の意見を完全に無視した。
「せきずいそんしょうとか内臓が出血してる可能性とか色々気にすることあるだろ?取り敢えず様態を言えよ」
すると彼は渋々、自分の体の状態を口に出す。
「……腰が痛くて起き上がれない」
「アイシングの準備するから待ってろよ」
背中も打ったが特に腰を痛めたらしい。炎症とか起きたら困るので先ずにアイシングをした。これは腰を強く打った時にできる炎症を避ける効果があるのだ。難しいことでは全くない。ただ痛い部分を冷やすだけ。親から教わった対応方法だ。
正直、ふっつーの対処方法である。
適当にポケットにあったビニール袋を綺麗にした。そして水筒から氷を取り出しそれをビニールに入れる。これで完成。
「じみに痛くて……。起き上がるのは……キツいかも……」
安静にしてろよ、と願った俺の思いは届かなかったようだ。彼は必死に地面に手をついて自力で起き上がろうとしていた。……自己解決がお好きなようで。いや、頼れや。
これまでの行動から完全に俺からの支援を拒んでいるようにしか見えない。
「起き上がりたいんだったら俺が力を貸すよ。」
「…え?」
彼は俺の方を見て困惑していた。今更ながらクールな雰囲気を全く感じられなくなったことに気付く。取り合えず、彼の要望にも合わせて世話を焼くのはここまでにしておくか。これ以上は邪魔だと思われるだけだろうし。
「動かすぞ。1、2、3、はい!」
有無も言わさずに後ろから彼を抱きかかえて、ベンチに座らせる。……こんな状況でも俺には危機感が無く、妙に柔らかくて甘い匂いがしたと感じてしまった。結構心には余裕があったかもしれないな。
その後、俺は彼にアイシングの方法を伝授してから離れた。
……その時に何度か目を逸らされたのが、悲しかった。
そして俺は彼との雰囲気が最悪だったから、そそくさと帰ることにした。結局ら家に帰ったのちにスケボーをしていないことに後悔するのであった。
~~~~~~~~~
今日の舞台は、向日葵市からし町にある【向日葵からし公園】。この名前の不憫さの原因は位置してる地域にある。
もちろんからし町の「からし」は平仮名であり他意はない。
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