ブラック専門学校エッセイ
無月弟(無月蒼)
自分の通っていた専門学校
小学校の思い出。
中学校の思い出。
高校の思い出。
大学の思い出。
これらのエピソードはよく聞きますけど、『専門学校の思い出』というのは、あまり語る人がいない印象があります(あくまで他と比べてですけど)。
単純に小学校や高校の方が色濃い思い出があったり、そもそも専門学校に進学していなかったりするのが原因かもしれませんけど、自分は専門学校時代の思い出、トークできるだけのエピソードはそこそこあります。
ただし、その多くはいいエピソードとは言えません。何せ自分の通っていた専門学校というのは、今でいうブラック企業のような考え方をしている学校で、教師と生徒との間に深い溝がある学校でしたから。
このエッセイではそんな専門学校時代のエピソードを、書いていこうと思っています。
まず自分が通っていた専門学校というのは、簿記を勉強するための学校でした。
商業高校を卒業した自分は更に簿記を学びたくて、専門学校に進学したわけです。
地元を離れて寮に入り、専門学校生活が始まったのですけど。
入学して最初は、明るい感じの学校という印象を受けていました。
まあ考えてみれば当然です。学校側も、入ってきた新入生に悪い印象を与えたくはないでしょうから、学校のいいところをこれでもかってくらいアピールしたり、先生も授業の中で冗談を交えたりして、一か月くらいは普通に過ごしていきました。
しかし最初に違和感を覚えたのは、入学して始めにあった、簿記検定試験の時。
自分の入ったクラスのほとんどの人がこの時、日商簿記検定の二級を受けることになっていたのですが、自分は受けるつもりはありませんでした。
なぜなら高校の時、すでにこの日商簿記検定二級を取っていたからです。
一度習得している資格を、わざわざもう一度取る必要なんてありませんよね。ですから試験の手続きはせずに、受験する他のクラスメイトに勉強を教えていたのですが……試験受付の締め切りが迫ったある日、先生が言ってきたのです。
「無月弟、お前試験の手続きが済んでないぞ」って。
しかし前述の通り、そもそも自分は試験を受けるつもりはありませんでした。
ですが、先生はそのことを知らないから仕方ないかって思い、すでに資格を持っているので受ける必要はないことを伝えました。
これでこの話は終わり。そう思っていたのですが……。
「何勝手なことを言ってるんだ。俺のクラスにいる以上は、絶対に受けなきゃダメだ」
……はい?
言っている意味が分かりませんでした。
だってもう資格は持っていますし、試験を受けるかどうかの選択権は、学校ではなく生徒個人にあるはずなのに。
だけどいくら言っても先生は聞き入れてくれずに、それどころか。
「受けないならこれから勉強を教えんぞ。それでもいいのか?」
と、脅しのようなことを言ってきたのです。
せっかく入学したのに、勉強を教えてもらえなくなったら困りますから、しぶしぶ首を縦に振るしかありませんでした。
試験には4千円掛かるので、できることなら受けたくなかったのですけど、仕方なく。
そしてそれから数か月後、試験は行われて結果が発表されましたけど、合格していました。
一度取っていた検定ですから、まあ当然ですね。
しかしそれを見たクラスの友達は
「あれ? 無月弟って日商簿記二級ってもう持ってなかった?」
と首をかしげていました。
そこで再受験することになった経緯を話したのですが……。
「それってひょっとして、学校側が試験の合格率を上げたかったから受験させたんじゃないの? 元々資格持ってるなら、合格するだろうし」
……いや、まさか。
これはあくまで友達の推測なので、根拠なんてありません。だけどすでに持っている資格をこっちの意に反して、わざわざお金を払って受けさせられたのは事実。
この時、うちの学校大丈夫かって思ったのですが……。
今なら言えます。大丈夫じゃなかった!
無理やり試験を受けさせられたのなんてまだかわいいものだったって、後に痛感させられることになるのです。
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