戦端
僕の予想通りであった。
ムスクロがキーリア王国と同盟を結び、領地に戻ってきたという報告がリスタ教国中にかけ巡ったと共に行動を止めていた他の枢機卿は。
ムスクロが己が教皇になって正教を正しきものに変えていくと宣言して内乱への参戦を大々的にしたのに合わせて、こちらへとリスタ教国にあるすべての戦力が矛先を向けてきた。
予想通り、リスタ教国にいる枢機卿や大司教などの有力者は最も強い者を叩き潰すことに力を入れてきた。
「流石に押されるか」
空から戦場全体を俯瞰して眺める僕は自軍の状況を冷静に分析する。
我軍もムスクロの軍も練度は上々。
それに対して敵兵は無秩序で練度もあくまでゴロツキに毛が生えた程度の実力であった。
だが、それでも圧倒的な数の差があった。
練度では埋めきれない圧倒的な量によってこちらは押されていた。
「割り切っているなぁ」
もう相手は自軍の統率を端から捨てている様子だった。
後ろに精鋭を並べて逃げたら後ろから打つ、死にたくなければ前に出て敵を殺せ、戦い方は自由。
シンプルだが、圧倒的なまでの数滴劣勢がある中では厄介だ。
しかも相手は宗教の名もあるので更に酷い。
異教徒を殺すというメンタリティで何でもしてくるので。
「だが、個人の質はこちらだな」
魔法があるこの世界において、集団と集団の戦いはおまけのようなところがある。
本質は戦略を根底からひっくり返すような、僕やぺークシスと言ったような戦略級の人材にある。
どれだけ戦略級の駒を持ち、どこでそれを振るか。
それによって世界の戦闘は大きく変わってくる。
「……いつ、動くかな?」
ノービアたんが勝手に戦略級の駒を大量に引き抜いていたため、その人材の数ではこちらのほうが多くなっている。
本格的な個人のぶつかり合いになればこちらに流れを持ってくることも容易に出来るだろう。
だけど、まだ……その時ではないかな。
ここで使っても戦場の趨勢を決める事はできない……こちらの切り札は多くある。じっくりと行こうではないか。
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