子ども

「まぁ、それでも僕の中ではそんなイメージってことだよ」


 自分の前で呆れているペークシスに対して、言い訳でも口にするかのように僕は言葉を吐き連ねていく。


「個人的にはノービアたんもレイシアもなし、何だよなぁ」


「……私はお前が難しいっ!」


 そんな僕に対して、ペークシスは本格的に頭を抱えてしまう。


「いや、別にそこまでペークシスが悩ませることじゃないよ」


 僕は頭を抱えているペークシスへと声をかける。


「金に困っている男爵家とか、愛人として迎え入れるのに最低限面目が保つ人と接触すればいいわけだし。ペークシスに迷惑をかけるつもりはないよ」


 わざわざこんなこと、ペークシスが悩むようなものではない。あくまで僕の、ひいては我が家の問題なのだ。

 部外者であるペークシスに迷惑をかけるようなことではない。


「……なん、っ?」


「ペークシスが嫌がっているのに、わざわざ僕も無理やり迫ったりしないよ。いきなりこんなことを話して悪かったね」


 こんな話、日本でしていたらしっかりとセクハラ行為で捕まっていただろう。

 悪いのは明らかに僕であり、彼女がわざわざ頭を抱えるようなことではない。


「……い、いや。わ、私はそのぉ、嫌とは言ってないじゃないか」


「……ん?」


 だったの、だが。

 僕は自分の目の前でもじもじしながらそっと視線を外すペークシスを見て、流れが随分と変わったことを理解する。


「えっ?」


「い、いや……別にゼーアの見た目は可愛いし……それでいてカッコいいところもあるし……むしろ、だっ!?お前の方が嫌じゃないのか!?私はもうすぐアラサーのおばさんだぞっ!」


「別に?ペークシスは可愛いし」


「はぅんっ!?や、やめろぉ!私は可愛いとか言われ慣れていないんだ!不意打ちは辞めてくれ!」


「えっ、ナニコレかわよ」


「はぅんっ!?」


 こ、この程度の褒め言葉で頬を真っ赤にしちゃうとかめちゃくちゃ可愛いじゃん。本当に初心なんだね。


「……少し、向こうの方に二人と会話をしてきていいか?」


 しばらく悶えていたペークシスは、ようやく落ち着いた末に彼女は口を開く。


「別にいいよ?確かに、性急だったね」


 よくよく考えて見れば、僕の発言はちょっと性急過ぎたな。

 いきなり言うことでもなかったね。確かに、雇い主や妹としたい話もあるだろう。


「それじゃあ、僕はもう応接室から出るよ」


 彼女の言葉に納得した僕はそのまま応接室を後にするのだった。


 ■■■■■


「なんで、そこはすんなり受け入れられて……すれ違っている?いや、今はそんなことよりもあの二人だ……」


 意気揚々と応接室から出ていくゼーアに対して、残されたペークシスは胃を抑えながら視線を動かすのだった。

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