最強の悪役貴族は推しを助けたい!~前世の知識を使って世界最強になった僕は死ぬ運命の悲壮的な自分の推しであるヒロインを助けようと思……って、あれ?主人公と結ばれて幸せになる推しがこちらに来るのだけど~
リヒト
転生
七つの魔力によって織り成される幻想郷「トクソテース」
その幻想郷には人間と魔族が分たれた世界に各々の勢力圏を広げて暮らしていた。
だが、今より遠い昔に二つへと世界を分けていた壁が消滅し、二つの世界が一つになってしまいました。
起点はどこかは今なお不明。
それでも人間と魔族は争いを始め、その争いは数千年経った今でも絶えることなく続いているのでした。
「あぁ……誰か、この終わりなき戦争を終わらせてくれる人が現れますように」
そんな世界の中で、今日も一人の美しい王女様は祈りを捧げるのでした。
■■■■■
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ、また死に腐れやがったっ!」
今から五年前にリリースされたゲーム、アルカナメモリー。
アニメ調の美しいグラフィックとそれによって彩られる壮大な世界を自由に冒険できるオープンワールドゲームである本作は日本のみならず、世界中で大ヒットした。
日本企業が作ったとは思えないほどの高予算をつぎ込んで作れたこともあってか、当然の如くそのストーリーも素晴らしいものとなっている。
ストーリーを織り成すキャラの一人一人も実に魅力的なゲームだ。
「あぁ」
どこにでもいる一般通過オタク高校生の僕も当然、世界中で話題になったアルカナメモリーは紳士の嗜みとしてしっかりとプレイしてちゃんと全クリした。
ストーリーにもしっかりと目を通し、堪能した。
堪能し尽くさせてもらった。
当然、ゲームの一つを終えれば推しの一つや二つくらい生まれるものであり、僕にも推しが出来た。
その推しの名はノービア・ライスカーナ。
本作に登場するヒロインの一人なのだが、この子は所謂悲劇のヒロインなのだ。
「追加ストーリー!分岐ストーリーも大量にリリースしているのに、なんでどこのストーリーにも彼女のハッピーエンドルートがないんだよぉぉぉぉおおおおおおお!」
当初、このゲームはリリース時点からストーリーが完結するようになっていたのだが、そのあまりの人気ぶりを得て、運営が幾つも追加ストーリーや分岐ストーリーも出している。
だが、それなのにノービアは今だ、一回も。
どのストーリーにおいても幸せになることはない。すべてのルートにおいて悲業の死を遂げてしまうのだ。
まさに悲劇のヒロインだ。
「あぁ……このクソ主人公がぁ!ノービアたんがこんなにも可愛い笑顔でお前を魅了しているというのに、何故その好意に気付かないのだ!」
主人公がノービアと向き合うのは何時だってすべてが手遅れになったときなのだ。
「僕なら彼女が助け出すというものを……っ!」
僕はこれまで己の推しであるノービアが助かるルートがないか、運営が隠しルートとして潜めているのではないかと数多のルートを試し、その度に彼女を死なせてしまっている。
運営は絶対に殺すという信念でも持っているのか、絶対にノービアが幸せになるルートがないのだ。見つけられないのだ。
「あぁぁぁ……」
今回も駄目だった。
燦々と輝くモニターにはしっかりとノービアが血に塗れて倒れている様子が映し出されている。
「クソがぁ」
それに忌々しいものを感じながら一度、僕はPCを落とす。
既に二徹してゲームへと勤しんでいる。そろそろ眠気の方も限界である。
「寝る前に少し何か食べるか」
そういえばゲームに熱中しすぎてご飯すら食べていなかった。
そのことに思い至った僕は食べものを得るため、椅子から立ち上がってキッチンの方に向かおうとしたのだが。
「あ、あれ……っ?」
僕の身体に力が入らない。
ただ、立ち上がっただけで体が悲鳴を上げ、そのまま崩れていく。
自分の膝が地面に付き、自分に床が近づいてくる。
これ、もしかしてヤバい奴じゃ……全身から力が抜けていく感覚に僕はゾッとしたものを感じながらも。
僕は自分の意識を暗闇へと落として体も地面に倒すのだった。
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