Classic
流天
湯煙の中
「……ふぅ」
ここはとある旅館の大浴場。お湯につかり、一人の男が溜息をこぼしていた。
「あれは、とても悲惨な事件だった」
何やら、物騒な話の様だが。
「おや、気になるかい?」
いいや、別に…
「それならば、話して進ぜよう」
え…
満月の夜空を見上げながら少しずつ、その事件について語り始める…
私は、その日友人たちとのキャンプの下見をするため山へと車を走らせていた。
時刻は丁度お昼時、お腹が空いてきて途中にある料理店へと入った。店名は確か…古野だったと記憶している。
店内に入り軽く店内を見回したのだがこの時間帯にしては人が少ないのでは?
と感じ不安を覚えた。
「いらっしゃいませ」
奥から従業員であろうか和服の女性が席に案内をその後、席につき昼食を注文をして待っていたのだが。
「きゃあぁぁ」
甲高い女性の様な、悲鳴が聞こえた。すぐに席を立ち、音の発生源へと向かう。
其処には、コックと思しき服を着た男が血だまりの上に横たわっているではないか!すぐに近づき脈を確認するも、脈は停止していた。
警察へと連絡し、待っている間店の内外にいる人へと聞き込みを始めた。
ここからの人の名前はプライバシー保護のため、イニシャルだけ述べさせてもらう。
現場の店にいたのは私を含め7人。そのうち従業員は2人、客は4人、清掃員が1人といった内訳だ。
初めに、従業員の2人に事件現場の話を聞く。
Aさん「あ、あの私は、厨房内には立ち入るなコックにきつく言われているのでレジの前に立っていました」
Aさんはここでアルバイトとして1月ほど前から雇われているとのことで、かなり狼狽した様子で答えている。
Tさん「私は、厨房内を覗いたりすることが多いから今回も軽い気持ちで覗いたらあんなことになっていてびっくりしたわ」
TさんはAさんの先輩でここでの仕事も長いようで、コックとの仲も良かったようだが。
「遺体発見者はあなただったんですね?」
T「えぇ、そうよ。扉を開けたら血だまりだもの、ビックリなんてものじゃないわよ」
とても興奮したように答えた。
「それはそれは大変でしたね、ちなみに今日なにかおかしなこと等は無かったですか?」
T「そうねぇ、届いた野菜の数が合わないと怒っていたくらいじゃないかしら」
「数が合わない?」
T「えぇ、まぁ普段でもそこまで使わないから丁度よかったんじゃない?」
「ちなみに合ってなかった物は、何かわかりますか?」
T「さぁ、わからないわ」
「ふむ」
T「そういえば、貴方は一体何者なの?」
「ああ、これは失礼。私はこういうものでして」
そう言って私は名刺を差し出す。
A、T「探偵?本当に?」
二人は名刺を見て呟く。
「はい、主に事件の犯人捜し等をですね」
「では、そろそろ他の人の話を聞きに行きますね」
驚いている2人をおいて歩き出す。
ここでは食材が足りなかったこと位しか収穫がないか。
野菜だけに……
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