第63話 怪しい男たち

「カシワギ君、体調戻るまで、ちょっと休んでいきなよ。」


同じ大学生講師のタムラが言う。



カシワギは体のダルさと強烈な眠気でタムラにもたれかかりながら歩いていた。



タムラがアパートのチャイムを鳴らすと、中から男が出て来た。

小太りで薄毛な中年で、スウェットの上下を着ている。


男は黙って、二人を中に入れた。

狭い玄関で、カシワギの足がもたつく。

タムラが支えながら靴を脱がせた。



中は狭くて、入るとすぐベッドがある。

タムラはカシワギをベッドに座らせた。


「ま、楽にしなよ。」


タムラがカシワギの横に座り、ジャケットを脱がし、ネクタイも外す。

そして、カシワギの上半身を倒した。



「へぇ。可愛いねぇ。」


中年の男が言う。



「まだ1年生だから、お酒の加減がわからないんですよ。」


お酒は、タムラから勧められて、周りに内緒で一杯飲んだ。

一杯しか飲んでないのに、こんなに具合が悪くなるなんておかしかった。



タムラがシャツのボタンを外そうとしてきたので、カシワギは手を掴んだ。


「あの……やめてください……。」


「首元くらいは、楽にした方がいいよ。」



タムラが続けようとするので、また止めようとすると、中年の男に手を掴まれた。

男から酒の臭いがぷんぷんした。



「カシワギ先生、大人しくしてれば、優しくするからさ……。」


マズイ……

このままだと、本当にやられる……

でも、意識は朦朧とするし、体に力も入らない。

何か飲み物に仕込まれたんだろう。


腕を動かそうとするが、がっちり掴まれている。



「顔だけじゃなくて、体もきれいなんだね……。」


タムラのねちっこい声が気持ち悪い。



「早く脱がせよ。」


中年に急かされて、タムラがズボンに手をかけた。

ベルトが外され、ズボンを下ろされる。



「場所、替われ。」


中年男がそう言ったので、タムラが腕を掴むがわに回った。

中年はカシワギの上にまたがり、自分のズボンに手をかけた。





ピンポーン……


と、玄関のチャイムが鳴る。


二人は黙っている。

出る気はなさそうだ。



ピンポンピンポンピンポンピンポン


チャイムが連打される。


「何だよ!」


タムラはイライラしながら玄関に向かった。

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