第26話 カシワギ先輩
ハルマからのメッセージで、しばらく勉強会を休むこと、登下校も別々にしたいと来た。
俺も、タツオミには勉強会を休む連絡をした。
もうすぐ夏休みだったから、また状況は変わるかもしれないけど、日常から急にハルマがいなくなってしまった。
もし、大学が遠くなったら、これが普通になってしまうんだろう。
♢♢♢♢♢♢♢♢
放課後、図書室に向かった。
リョウスケに甘え過ぎていた。
タツオミとの状況を目の当たりにしても、リョウスケのことはやっぱり好きだ。
何か事情があることも分かる。
告白をせずにキスから始まった関係だから、リョウスケに浮気心が出るのはしょうがないんだろう。
図書委員の仕事が溜まっていた。
毎月、おすすめの本の紹介文を書く。
今回は恋愛小説だった。
恋愛小説は苦手だ。
好きなのか、好きじゃないのか迷った挙句、ライバルが出たりと面倒臭い。
はっきりしろよ、と思う。
なのに、自分の恋愛はまさにそんな感じだ。
男同士の高いハードルを超えたはずなのに、落ち着かない。
そもそも、リョウスケにとってはやっぱり俺は友達で、体の関係だけになるのがちょうどいいんだろうか。
それはそれで、幸せかもしれない……。
そんなことを考えていたら、声をかけられた。
「ハルマ、珍しいね、こんな時間に図書室にいるなんて。」
図書委員長で三年のカシワギ先輩だった。
「紹介文がまだ書けていなくて……。恋愛小説が苦手なんで。」
「そうなんだ。ハルマはモテるから、経験豊富だと思ってた。」
先輩は爽やかに笑った。
穏やかで優しいカシワギ先輩は、男子からは信頼され、女子からは人気だった。
でも、俺は苦手だった。
一年の今頃、カシワギ先輩と図書整理をしていた。
他の人が予備校やら用事やらで早く帰り、暇だった俺は遅くまで先輩を手伝った。
委員会に入ってから、先輩は委員会のことだけでなく、学校のことを色々教えてくれたり、よく話を聞いてくれた。
いい先輩に恵まれたと思っていた。
まもなく図書整理の作業が終わりそうとなった時、先輩から急に抱きしめられた。
「ごめん、実は一目惚れしたんだ。」
そう言われて、キスをされた。
俺は驚いて先輩をつき飛ばして、「ごめんなさい!」と叫んで、走って帰った。
それから、先輩を避けていた。
先輩が声をかけて来ることもなかった。
「面倒くさいんで、恋愛って。」
「そうかもね。相手があることだから。」
先輩は、今俺のことをどう思っているのだろう。
「あのさ、ハルマはボランティアに興味ある?」
「え?まあ、内容によりますけど。」
「移動図書館の本整理と、イベントでの子どもへの読み聞かせボランティア募集してて……。ぶっちゃけ、今僕しかいないんだ……。もし、日程合えば、来てくれないかな……?」
先輩は困り顔で言った。
リョウスケとこんな感じになっていなければ、断っていた。
「……暇なんで、手伝えると思います。」
そう答えた。
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