最終話 そして、伝説は作られた
「試験の結果が来たよー」
母親は私に大きな封筒を手渡してくれた。
私は試験の結果が来るまで、どれだけ面接に手応えがあろうと心配は心配だったのだ。
恐る恐る封筒を開ける。
「あっ……合格だ、よかったぁぁ!」
私が安心して一息ついていると、
「まぁお母さんは受かると思ったけどね」
と母親はほくそ笑んだ。
「なんでわかるのさぁ!」
「こんな大きな封筒なのに受からないわけがない」
なにその自論……と思いながらも封筒に入った書類をひとつひとつ読んでいくと、とんでもない言葉が入っていた。
「学業奨学金、半額免除……!?」
「えっ、うそ!半額免除してくれるの!?」
「だって、見てこれ」
「本当だ、通信制なのに!前例がなかったけどキセキ、起こしちゃったね!」
と母親は満天の笑みを浮かべた。私も、前例を覆した喜びを噛み締めていた。
そっか、母親からしたらキセキなのか。半額免除というのは。
「担任が野口先生になったことには意味があるんだよ」
母親の発言は本当にそのとおりだった。自分の努力もあるけれど、野口先生じゃなかったら、どうなってたかなんて、それは誰にもわからない。ただ、野口先生だった今回の場合、たしかに半額免除になったことは事実で。
「人生、なにが起こるかわからないもんだな」
と支えてくれた家族と友人、先生方に誇りをもって学校へ向かった。
でも、何より嬉しかったのは、滅多に褒めない担任からのこの言葉。
「お前、すっごく頑張ったよな」
このようにして、私の伝説は作られたのだった。
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