第4話 面接練習と入試での希望
「はい全然ダメーっ」
野口はドンドンと音を立てながら圧をかけた。今は面接練習。面接経験はまったくといっていいほどやったことがない。私の入った通信制女子校でさえ面談で済んだから。あぁ、ショックすぎて私の目から涙が出てくるよ。そして心臓は熱くなって腸が煮えくり返りそうだ。
「私面接経験ないんですけど?」
「それは言い訳だろうが。なーんでこんなに言えんのか、スラスラと。自分の言葉で言え」
「それが、できないんですよ……」
私が言葉を覚えることが苦手なのは、自分でもよくわかっている。だから中学時代につまづいたし、通信制女子高に来たんだよ。またイライラして顔が真っ赤になってる。
「志望動機は、作文の内容にしろ。いいな?面接はすべて提出したものに合わせるんだ」
私が決めた内容じゃないのに、と私は心の中でぼやく。
「ん?不満げだな。もういい、今日は帰れ。そんでDVD渡してやるからそれで勉強しろ」
「……わかりました」
とりあえず、一時退散という選択をすることにした。
「野口先生は本当にこだわり強いねー」
母親は私が愚痴を吐くなり、担任に呆れていた。DVDも見せたけど、カッコつけたものだった。
「公務員で課長やってるお父さんにも相談してみるわ」
そんなことを言ってると、鍵を開けて扉の開く音がした。父親だった。
「ただいまー」
「おかえり。お父さん、カクカクシカジカで……」
「ふーん、そう。お父さんは双川大に作文出したときから、このカッコつけた作文や面接の自己アピールは大嫌いだと思ってたよ」
「……!!」
そんなスッパリと言うかよ!しかも、隣で母親は大笑いしてるし……。
「作文のとおりにやらなくても、最初の志望動機だけ合わせればいいんじゃない?わたげという人を知ってもらうには、本音を出すのが1番だよ」
と母親はアドバイスをくれたので、私は少し気が楽になった。
「ありがとうね」
と私は笑顔を向けて、面接の暗記をするためにノートに書き込んだ。
それから練習は5回くらいしたけど、入退室くらいしか上達しなかった。それでも、大学のパンフレットを見ながら、モチベーションを上げる努力をした。あとはもう、面接官との相性次第。
「明日は入試。戦じゃ戦」
そういって眠りについた。
いつも通りにバスに乗って教室に入ったけど、ピリピリ感が
「13781103番の方、どうぞ」
あぁ、やっと呼ばれた……と思いながら、慣れないパンプスを履いて面接室に向かった。
「失礼します」
と言ってお辞儀をし、目に入ったのはベテランの男性とベテランの女性の2人だった。この2人が面接官らしい。
「受験番号と出身校、名前をお願いします」
と男性面接官が言うので
「13781103、双川産業高校通信制からまいりました、西脇わたげです」
と私が言うと、面接が始まった。
「志望動機を教えてください」
と女性面接官がいうので、野口のやり方で伝えていく。すると、案の定女性面接官が「NHKなんか見なくても授業で教えるから大丈夫だよー」
と笑った。これなら、本音を言っても大丈夫そうだ。あとは質問が良いといいんだけど……
「双川産業大学に入学したら何をしたいですか?」
いい質問きた!チャンスだ!
「私は双川産業大学に入学したら、美術の授業を受けたいです!」
でも、じゃあなんで経営にしたんですかって聞かれたら怖いな……
でも、そのような心配は杞憂に終わった。
「どのような授業を受けたいですか?」
「経営学部ではマーケティング論や経営管理論、美術学部では色彩学の授業を受けたいです」
「ほう……」
実際に何度も受けたい科目を考えていた私だからスラスラ答えることができた。
「このように科目名まで答えた人は、わたげさんがはじめてです。これからもあたたかなわたげさんでいてください。以上で面接を終わります」
女性はこのように評価を高くしてくれた。
「ありがとうございました、失礼いたします」
手応えありまくりの面接だった。これなら、合格できるかもしれない……!
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