魔法少女マフィンと魔法の石

ヤコナイト

第1章 モンスターの誕生

薄暗い森の中。

ピンク色の髪の少女が一人、カゴにキノコを集めて歩いている。


少し湿った苔が鬱蒼と生えていて土の匂いがする。

少女は鼻歌を歌いながら、地面を注意深く見ながら歩いていた。


すると。

道端で何かが光った。


光るタイプのキノコか。明かりを灯す魔法に使えるな、なとウキウキしながら近寄ってみると

ぼんやり光る石のようだった。

しばらくしゃがみこんで不思議そうに眺めてから、カゴに収集する。

スカートについた落ち葉を払い、家に持ち帰ることにした。


真夜中。

いろんなぬいぐるみが飾ってある薄暗いへやで灯りを灯して、少女が何かを縫っている。


耳が大きくてツノが生え、とてもつぶらな瞳をしている。


ふわふわのファーで作り上げているのはモンスターのぬいぐるみ。



ほぼ完成して持ち上げてまじまじと見つめた時、何かがカタッと音がして、その方向を向くとキラッと石が光るのが見えた。


『森で見つけた石・・・』


磨いてみると、綺麗な透き通る七色をしていてぽうっと光っている。


『綺麗・・・・』


綺麗だからこの子の心臓にしよう。


マフィンは、手にとると、モンスターのぬいぐるみに重りとして石と綿を詰めた


縫い閉じると、棚に並べてみた。

なかなか可愛く仕上がっている。


満足げに眺めた後、少女はあくびをしてベットに入った。

明かりを消した。


『おやすみ。モンスタールル。』




次の朝、

箒を手に持ち家の前を掃除している。

その時、

美しいネコの顔をした、青年が歩いてきた。

顔や手足は猫だが、ローブを纏い、一風変わったイチゴが乗ったケーキの帽子をかぶっている。


『綺麗な猫・・・・』

周りの音が瞬間的に何も聞こえなくなり、

マフィンは、宇宙全体が止まった気がした。

猫の青年が、こちらを見て目があったのだ。透明なクリスタルのように澄んだ目だった。


『こんにちは!僕はドルチェ。』


『こ、こんにちは!マフィン・・・・よ』


『この辺りに、光る虹色の石を見かけませんでしたか?探しているんです。』



ん?石?

マフィンはびっくりして目をまるくする


『さ、さあ?』




『そうですか、ありがとう。マフィン。』


青年は爽やかに挨拶して颯爽と去って行ってしまった。



マフィンは我に帰り、急いで家に入る。


『??光る虹色の石って??昨日の夜、ぬいぐるみに入れた、あの石の事じゃないよね⁈』


部屋に入ってぬいぐるみを置いた棚を見る。



『!!!!!ないッ!』


慌てて他の棚や引き出しも開けて探す。


『えー、なんでなんで?確かにここに!』


いろんなところを引っ掻き回して探すが



『ない!』




台所でガタガタ音がした。

マフィンは慌てて台所へ入るとあらゆるものが食いつくされている。

カゴは倒れ、野菜は散乱し、鍋の中で似ていた晩御飯のシチューも空っぽになり床に転がっている。


『え〜!?ちょっと、なんなのよ、今日は!』


ぱっと台所の隅に目をやると、可愛らしいカゴの中に小さなふわふわの何かがキノコを食べている。


ツノが二本生えて大きな耳がある。モンスターのようだ。



『そんなに食べちゃだめ!

そのキノコは!!!』



言い終わらないうちに

モンスターの体がみるみる震えて大きくなり天井を突き破る!


『きゃー!』


『ギャオー!』

モンスタールルが地響きのような雄叫びをあげる。



倒れてきた家屋にマフィンが押しつぶされそうになった時、

ふわっと体が宙に浮き、家の外へ。



ドルチェが

マフィンを抱えて助けてくれたのだった。


『あっ!!!さっきの!』マフィンが叫んだ。


『このモンスター、君のうちの子⁈』

目線は屋根を突き破って吠えているモンスターの方に向きながら

ドルチェが呆れ顔で言った。


『この子大きくなるキノコ食べちゃって!これを食べさせれば元に戻る!』


小さな薬瓶をポケットから出した。


『わかった、これ食べさせればいいんだね!』


ドルチェが薬瓶を受け取り颯爽とモンスターの口元にジャンプすると、薬瓶の中身を大きく開けた口に放り込んだ。



『ギャオ≈!!!!』


みるみるうちに小さくなるモンスタールル。


マフィンは壊れた家を見てただ呆然と立ちすくんでしまっていた。




『キュルルル?』


小さく戻ったモンスタールルは、

可愛らしい目でドルチェとマフィン見つめている。

まるで、何が起こったのかわかっていないみたいだった。


『この子、昨日私が作ったぬいぐるみなのよ。』


『え?ぬいぐるみ?』


『うん、信じられないかも知れないけど。

昨日まではぬいぐるみだった。  

実は・・・』


マフィンはお腹に虹色に光る石を入れた事を話した。



『そっか。』



『信じてくれるの?』

マフィンは、ドルチェの顔を覗き込んだ。


『うん。

僕が集めている七色に光る石は、大きな魔力を秘めている石なんだ。それが世界に7つある。

その中のひとつがこの子の中にあるならば生命が宿っても不思議ではないよ。』


『魔力?』


ドルチェはキリッとした顔をして、マフィンに向き合った。

『相談なんだけど、このモンスター、僕に預けてくれないか。』


『えっ』

驚くマフィン。


『石を集めるのは、僕の使命なんだ。』


じっと見つめ合うマフィンとドルチェ。

しばらく沈黙した後、マフィンが口を開いた。


『うん、わかった。でも条件があるわ。』

ぐっと手を握り、決意するマフィン。


『石を探す旅、私も連れて行って!』



『えっ?!それはちょっと・・・・・・!

長い旅のりになるし、危ない場所も通ることになるぞ?!』

今度はドルチェが慌て始める。マフィンは負けずに食い下がっていく。



『だってこの子、私が作ったのよ。

だから私が見守りたいの!

それに、家も壊れちゃって、行くとこないんだもん!』


崩壊した家を指さす。


ドルチェはため息をついたが、諦めた表情で微笑んだ。


『うん。君には負けたよ。

では3人で石を探す旅に行こう!』



2人、握手をする。マフィンもやっと微笑む。



『キュルルル?』

ルルもわからないなりに、タオルをしゃぶりながら見つめてた。

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