プロローグ・裸で乱舞──シャワーピチャピチャ!

     ◆♀ 【裸族乙女】 ♀◆


 乙女のエキスを吸い尽くし、淫靡な絡み合いを執拗に求めてくる下着どもを強引に引っぺがすと、脱衣室の洗濯機に葬り、フタをしてその上にバスタオルを置いたら、灼熱地獄から天国へと続く門をくぐった。

 ユニットバスのドアを閉め、密閉空間を拵える。

 バスをまたいでシャワーカーテンを閉じ、シャワーのレバーを捻ると、生暖かい液体が、豊かなバストを舐めつくし、柔肌を這いずり回りながら乙女のエキスを絡め取って落ちてゆく。非常に軽い感じの水だ。シャワーを少し熱めにして頭から浴びたあと、体と髪を洗う。

 濡れた裸体をバスタオルに抱き締められたまま、キッチンの床に足を置いた。

 一人ぼっちの、いつもの穏やかな“夜の営み”が始まる。

 穏やかな……



     ◇♂ 【××族 X】 ♂◇


 ユニットバスのドアが、西日をはね返してギンギンギラギラ眩しいなあ。思念で穴を開けてやろうじゃねえか。ほーら、難なく突き通してやったぜ。極々小さな針の穴みてえなよぉ。そーっと覗いて見てしんぜやしょう。みんなでお遊戯でもしているってえのかい?

 見える見える。ほうほう、シャワーカーテンの向こう側に影だけが乱舞しとるとよ。何と優雅な踊り子じゃろうて。

 オレには人間の心が読めるとよねえ。お嬢ちゃんの心も丸見えたい。もし、オレを亡きものにしようものなら……そんな心を察知したら、全身全霊で立ち向かわなければならねえ。

 あんたに楯突こうなんざ、これっぽっちも考えちゃいねえぜ。なあ、お嬢ちゃん。なぜなら、オレは根っからの平和主義者だからよ。争うなんて悲し過ぎる。だが、本能の誘惑には敵わねえ。死肉を貪り喰らう夢は消えることはないのさ。邪悪な心が抑えられない夜も、時にはある。

 矛盾だらけだが、オレは極力身を律するつもりだ。こちらからは決してちょっかいは出さないと誓う。まあ、努力する。一応、安心してほしい。だから、嫌わないでいてくれることを望む。

 これから、オレとの親密なおつき合いの始まりだぜ。仲良く共生と洒落込もうじゃねえか。人間との共生……種族の掟なんだ。

「よろしく頼むな、お嬢ちゃん!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る