きさらぎ駅

白雪の雫

第1話






 私の名前は遠野 裕美。


 今年の春に県内でも名の通った大学に通う事になったばかりです。


 これから話すのは二年前・・・私が高校二年の時に体験した不可思議な出来事です。






 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆






 秋の訪れを肌で感じる事が出来る十月初旬の夕方


 その日の私は何時ものように地下鉄に乗って我が家へと帰る途中でした。


「あれっ?誰もいない?」


 私が帰る時間帯は学生だけではなく百貨店で買い物した主婦や帰宅途中のサラリーマンで混雑しています。


 私が乗った駅から二駅目に向かっている時からだったでしょうか。


 いつの間にか、車内から自分以外の人間が消えていたのです。


 隣の車両に目を向けてみたのですが、自分がいる車両と同じように乗客がおらず閑散としていました。


 車掌か運転手に聞いたら何か分かるかも知れないと思った私は、自分が乗っている四両目から近い事もあったのか、車掌がいる最後尾に向けて歩いていました。


 ですが、どうした事か幾ら歩いても辿り着かないのです。


(神隠し?それとも今流行の異世界トリップ?)


 エレベーターや電車で異世界に行ったという話が脳裡に過ったのですが、あくまでそれらは都市伝説に過ぎません。


 そんな事あるはずがないと、私は浮かんでしまった考えを慌てて否定しました。


(彼女達は確か・・・)


 そんな私の目に、自分が通っている学園の女子が一ヶ所に集まっている三人の姿が映りました。


 乙女ゲームに出てくるヒロインのように可愛い顔立ちと緩やかなウェーブが掛かった栗色の髪を持つ小柄な彼女は藤堂 霞さん、整った顔立ちと腰の辺りまであるストレートな黒髪を持つ才色兼備で名高い彼女は堀川 百合さん、陸上部のホープであるボーイッシュな彼女は竹本 菫さんといいます。


 藤堂さんと堀川さんは学園祭のイベントの一つであるミスコンで一・二位を争う程の美少女、そして竹本さんは県内の大会で優勝した事もあります。


 学園内において彼女達の名前を知らぬ者はいないと言っても過言ではないでしょう。


 三人がいる場所に向かった私は、何があったのかを尋ねました。






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