少女高専/Shoujo Kousen
イズラ
#0「入試面接だ。」
私の名前は
ここには、面接で受かるだけで入学できるそうだ。これほど条件の良い学校はない。気がかりなことはあるものの……。
「次の方ー」
冷めきった声で呼び出されたため、こちらも「はーい」と冷めた返事を返す。
試験は一対一で、面接官はスーツの女性だった。
「ではまず、そちらの机に置かれた”ナイフ”を手に取ってください」
まるで意味が分からない。そのまま伝えたものの、相手は首を傾げていた。
繰り返し言っても、面接官は無視して続けた。
「
何も聞いていない、何も分からない。必死に訴えると、面接官は「はい?」という表情で私を数秒間見つめ、やがて口を開いた。
「そのナイフで、”貴方の”体のどこかの部位を切断してください。切断部位・体積が一定のラインに達するかどうかが、合格基準となります。手早くお願い致します。……どうか、なさいましたか」
次の瞬間には、私は席を立ち、教室のドアへと走り出していた。
「お待ちください、面接は終わっておりません――――」
階段の踊り場まで降りた頃には、女の声は聞こえなくなっていた。
ここから逃げなければ。強い生存本能だけが、私を動かしていた。
背後から、”何か”が追ってきていたから。
「 「 わ――し、あ――つと――もだちに――――――い―― 」 」
「 「 ――こがい――――だ、あ――らかに――タレだ―― 」 」
「 「 ――お――い――ど――――こ――に―――い―――く――? 」 」
両手で耳を塞ぎながら、死にもの狂いで階段を駆け下りて駆け下りて――。
あの日から、ずっと怯えて暮らしていた。
あの空間の異質さは、五感全部が捉えていたはずなのに。
逃げているときも、無数の怪物が私を見ていた。見ていたのだ。
あの後、すぐに家を出た。両親は何も言わなくなって、ただゴミのような目をしていた。
後悔などしていない。あんな異常な人間たちを生かしておいたら、いつか、きっと殺されていただろう。いや、ゼッタイに殺されていた。
私はこれから、新たな人生を歩んで行く。
どこかで働いたりなんかしない。絶対に、そんなことはしない。
なぜかって――――。
私はキャリーバッグを引き、あの校舎の前に立っていた。
前に会った”怪物”は、私に気がついたようだ。
―続―
少女高専/Shoujo Kousen イズラ @izura
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