違和感《グランツ side》③

「そういや、母方の実家は?」


 『何で皇帝ばっか、世話を焼いてんの?』と不思議がるルカに、私はそっと眉尻を下げる。


「ルーナ皇妃殿下のご実家は、静観を決め込んでいる」


「はっ!?こういう時って、普通孫の力になるんじゃねぇーの!?」


「そうだね……でも、あちらは頑としてジェラルドとの交流を避けている。その理由は私にも分からない」


 フルフルと首を横に振って答えると、ルカは思い切り眉間に皺を寄せた。

ようやく、私の悩みが分かってきたのだろう。


「はぁー……確かにこりゃあ、違和感だらけだな」


「そうなんだよ。特に例の五年間は謎が多くて……いくら離宮に籠っているとはいえ、皇妃やジェラルドの暮らしぶりを一切知ることが出来ないんだ」


 トントンと調査資料を指でつつき、私は悩ましげな表情を浮かべる。


「箝口令を敷いて、情報規制しているにしてもこれはさすがにおかしいだろう?まるで────最初から何もなかった、みたいな……」


 自分でも馬鹿げた話だと思うが、ここまで何もないと……そう考えるしかなくなる。

『一体、何が起きていたんだ?』と訝しみ、私は前髪を掻き上げた。


「とりあえず、かつて離宮で働いていたという侍女や従者を探してもらっている。恐らく、当時の状況を知る者に話を聞けば、何か分かるだろう」


 徹底的に隠されたジェラルドの過去を想像し、私は強く手を握り締める。

『どのような真実が待っているのか』と身構える中、ルカは両腕を組んだ。


「事情は大体分かった。俺の方でも探ってみる」


 『体質上、盗み聞きは得意なもんで』と茶化し、ルカはニヤリと笑う。


 相変わらず悪趣味というか、なんというか……まあ、実際役に立っているから別にいいんだけど。


「頼りにしているよ」


「おう。任せとけ」


 気合い十分といった様子で拳を握り締めるルカに、私は大きく頷いた。

と同時に、離宮のある方向を見つめる。


 弟とはいえ、他人の過去を暴くなんて出来ればやりたくないけど、ベアトリス嬢を守るため……そして世界の滅亡を防ぐため、全力で調べさせてもらおう。


 『遠慮はしない』と心に決め、アメジストの瞳に強い意志を宿した。



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いつも、『愛する婚約者に殺された公爵令嬢、死に戻りして光の公爵様(お父様)の溺愛に気づく 〜今度こそ、生きて幸せになります〜』をお読みいただき、ありがとうございます。

作者のあーもんどです。



本作はこれにて第一章完結となります。

第二章の執筆に伴い、しばらく更新をお休みします。

再開時期は恐らく、三月中になるかな?という予想です。

(何かしらイレギュラーな事態が起こらなければ、上記の時期に再開できる……筈!)



また、いつもブックマーク・ハート・星などありがとうございます!

とても励みになりますし、精神的に救われます!

やっぱり、何かしらの形で反応をいただくと嬉しいので!

自信にも繋がりますし!



それでは、今後とも『愛する婚約者に殺された公爵令嬢、死に戻りして光の公爵様(お父様)の溺愛に気づく 〜今度こそ、生きて幸せになります〜』をよろしくお願いいたします┏○ペコッ

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