違和感《グランツ side》②
照明の切り替えも、電気ショックによる気絶も一般人じゃ出来ない。
力加減を間違えて発火させたり、殺したりする可能性の方が高かった。
「一体、どうやってあんな力を手に入れたのか……師匠は誰だったのか、探る必要があると判断したんだ。ルカも知っての通り、どんなに優れた才能を持っていても扱い方を学ばなければ成長出来ないからね。必ず、ジェラルドに魔法を教えた人物が居る筈……それもかなりの手練れが、ね」
意味深に目を細めながら、私は手に持った書類を執務机の上に置く。
「でも────どんなに調べても、そんな人物は見つからなかった」
ジェラルドに関わった人間のリストを指さし、私は大きく息を吐いた。
自分自身、ここまで難航するとは思ってなかったから。
『少し調べれば分かると思ったのに』と嘆きつつ、目頭を押さえる。
「一応、魔法の基礎を教えた家庭教師は居たけど……知識に長けた学者タイプで、実技はあんまり得意じゃない。それにジェラルドが直ぐに魔法の講義を取りやめたから……」
「あれこれ教え込む暇はなかった、ってことだな」
「その通り」
パチンッと指を鳴らしてウィンクすると、私は椅子の背もたれに寄り掛かった。
これまで報告された調査内容を思い返しながら、手で目元を覆う。
「それで、ジェラルドの過去を調べていくうちにだんだん違和感が出てきて……」
「違和感?」
『魔法のこと以外にも何かあるのか?』と驚くルカに、私は小さく頷いた。
「最初は『私の考えすぎかもしれない』と思っていた。当時の状況を考えると、そこまで違和感のあることじゃないし……でも────」
そこで一度言葉を切ると、私は目元に当てた手を強く握り締める。
「────それにしたって、ジェラルドの過去に関する情報が少なすぎるんだ」
僅かに眉を顰める私はゆっくりと身を起こし、執務机に肘を置いた。
「特に生まれてから、五歳になるまでの間……まあ、ある程度は仕方ないんだけどね。ジェラルドの母君であるルーナ・ブラン・ルーチェ皇妃殿下が、妊娠・出産を機に長らく体調を崩されていて……ジェラルドと一緒にずっと離宮へ籠っていたから」
二年前に亡くなられた皇妃の存在を思い返しつつ、私は頬杖を突いた。
「ジェラルドが表舞台に立つようになったのは皇妃を失い、陛下の管理下に置かれるようになってからだよ。多分、ジェラルドの命を守るためにどこかの貴族家へ婿入りさせる魂胆だったんじゃないのかな?母親を亡くした皇族は皇位継承権争いにおいて、大分不利になるからね」
「今のうちにフェードアウトさせておこうって、ことか」
『そもそも、争わないのが一番だもんな』と言い、ルカは共感を示す。
政治の事情には明るくないが、最悪殺し合いに発展しかねないことは何となく理解しているのだろう。
「まあ、本人はめげずに皇位を狙っているみたいだけどね」
「親心子知らずだな〜」
『とっとと結婚して皇位継承権争いから、一抜けしろよ』と述べ、ルカはやれやれと肩を竦めた。
かと思えば、何かに気づいたかのように顔を上げる。
「そういや、母方の実家は?」
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