第73話 収穫者タケル
僕の名は
両親ともに働いていて残業が多く、食費を貰っていて、時々自炊するけど、大抵はコンビニで夕食と翌朝の分のお弁当と、クラブ活動で使う予定のカッターナイフを買って、家に向かって歩いていると急にめまいがして、道路に倒れこんだところまでは憶えているのですがその後の事は思い出せません。
気がつくと知らない町の知らない建物の中に居て綺麗なお姉さんとカウンター越しにお話をしていました。
「タケル君、13歳ね。うん、君には確かに【収穫者】の称号が付いているわね。おめでとう。これで君は一生食うに困るようなことはないわね。真面目に食品収穫ダンジョンに通って国民の食料を収穫してきてね。これがギルドの証明プレートよそしてこれがそのダンジョンへの地図よ」
此処ってどう見ても異世界だよね。エルフもいるしドワーフもいるしなによりケモ耳尻尾付きの女の子がいます。
不思議なことに僕は【収穫ダンジョン】に入って、穀物を収穫しなければならない義務を感じています。
手持ちのお金も無いし、お金を稼いで宿屋を探さなくてはいけません。
僕はダンジョン目指して歩き出しました。途中から人の気配が無くなりました。ダンジョンに向っているのは僕だけです。
道端に女の子が座り込んでいます。近寄ると僕に手を伸ばして
こう言いました。
『お兄さん、何か食べ物持ってませんか?私に恵んでくれませんか?」
僕の手にはコンビニで買った弁当が有ります。それを知ってたの?
それはともかくめっちゃ可愛い子だったのでついでに僕も食事しておこうと脇の広場の岩に座って2人で食べました。
女の子に弱いヘタレです。
だって、あんなに可愛い女の子が死にそうな顔と声で助けれくれと言われたら僕には到底断れません。
「いったい何が有ったの?」
「あ、ごめんなさい。そしてありがとう。私の名前はスイート。13歳ハーフエルフよ。普段は冒険者として薬草採取や弱い魔物を駆除して生活費を稼いでいたのだけれど、最近薬草も育たなくなって、魔物もエサ不足で共食いして数が減っておまけに食肉として見直されて中級冒険者達に乱獲されて、私達初級冒険者まで回ってこないのよね」
それでお金が稼げなくて、2日食べていなかったのだとか。
「【収穫ダンジョン】には入れないの?」
「【収穫者】の称号が付いていないと入口で弾かれてしまうの」
「パーテイーを組んだら入れないかな?」
「どうかしら、今まで経験したことが無いから分らないわ」
「じゃあ1度試してみない?駄目元でさ」
「え、いいの?」
「うん。ここで会ったのも何かの縁だろうから試してみよう」
というわけで【収穫ダンジョン】に来ています。近くに収穫物の買い取り所が有ります。称号が無いと入れないと言うので止められることは有りませんでした。
パーテイーを組む方法は何故か判っていました。お互いのステータス画面を出して僕からパーテイー加入要請を彼女に送って彼女がOKをタップすると無事パーテイー結成完了しました。
さあダンジョンに入ってみましょう。
入れました。目の前には黄金色に輝く小麦の穂が風に揺れています。
さあ、収穫作業を始めよう!
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