第45話 山火事を消しましょう

 今度は陸路でピーチ王国の最南端の町【サウタン】を目指します。南の海の海産物がどんなものが有るのか楽しみです。


私の馬車は少しズルをしています。まず私が道普請してでこぼこの無い平らな道路にしてその上を緩衝機能を強化した車輪で走りますが実際には道路から数センチ浮上しているのです。


横から見ると車輪はしっかり地面に接触しているように見えている筈です認識疎外魔法が常時掛けられているのです。馬車の中座席はふかふかのクッションになっています。馬車自体に防御結界が張られています。お馬さんにも雨風を防ぎ如何なる攻撃から守ってくれる結界が張られているのです。


 ですので、快適に、しかも早く走行出来ます。


冒険者ギルドで購入した地図で所要日数3日の距離を1日で走破してしまいました。人目に付かない広場を探して自宅を取り出して休みます。

 



頑張って走ってくれたお馬さんにはご褒美に疲労回復とスタミナアップの効果を持つリンゴと角砂糖を食べさせてあげました。


翌朝早く出発して街道に戻ってしばらくすると何かきな臭い匂いが鼻につきます。何処かで火事?

風向きから考えると南東方角のようです。でもそちらに向かう道は地図に有りません。

仕方ありません。飛んで様子を伺いましょう。

地上500mに浮上して見回すと見えました、山火事です。

南東約1km標高約600mの針葉樹と落葉樹の入り混じった里山といった感じの山です。お馬さんと馬車を残していくわけにもいけないので結界で包んで浮上させ引っ張って現場に急行しましょう。


山火事は麓の人家まであと100m位に迫っています。人々が荷物を持って右往左往しています。


「あの山火事消しちゃってもいいですか?」

万が一焼き畑農業の為にわざと燃やしていたらいけないので確認します。

「そりゃ消せるものなら消して欲しいが、しかしどうやって?」

「空から水を撒きます」

そう言ってスイちゃんと一緒に飛んで現場に着いたらスイちゃんに龍の姿に戻って貰って山頂に近い方の火に水を噴出して貰います。

私は麓に近い方の火に収納していた畑に溜まっていた水を二次被害が出ない程度の強さで散水します。収納の中で土と水を分離しているので綺麗な水です。でも飲料にする時は浄化魔法で更に綺麗にします。気持ちの問題です。

下の方の火事は消えたので中間地点に向かいます。


大変!スイちゃんの水流が強すぎて土砂崩れが起きそうです。

[スイちゃん水を止めて出さないで!」


私は余分な水を収納しつつ、まだ燃えている所に水を掛けていきます。

鎮火しました。白い煙は湯気です.火の気配は有りません。

スイちゃんと合流してさっきの人達の所に向かいます。


 本日の私のいでたちは最初から仙女の真白なドレスと神様のご威光を示す御紋入りのローブです。

 誰かいちゃもん付けて来る人が現れたら

「この紋所が目に入らぬかー」

と言ってみたいと思うおちゃめな私ですテヘッ。


 不思議なことに始めてこの紋所を見た人でもとっても高貴な物だと判るのだそうです。悪しき心を持つ者にとっては恐れおののくような神のご威光にひれ伏すのだそうです。


 「もう大丈夫です。火事は消えました。ですが、目に付かぬほど小さな火が残っていると、また燃え出す恐れが有るので警戒は必要かと思われます。ご注意を」

 「ありがとうございました。何と言ってお礼をすれば宜しいのか……この貧しい村では、お礼のしようもございません。申し訳ありません」

「礼など必要ございません。それよりこの火事で怪我とか火傷を負ったかたはいませんか?幸い私が治療ポーションを所持していますから遠慮なく申し出て下さい。無料で治療致します」

 「動かせずにいるものが2人居ります。申し訳ございません、ご足労いただけましょうか?」

「判りました。案内して下さい」

「は、はい、どうぞこちらに」


 ほぼ全身火傷状態の男性2人が布団に寝かされていました。

これは飲ませるより、降り掛けて治した方がいいでしょう。私は特殊上級ポーションをお2人に降り掛けました。


 「う、うーん、あれ、俺は大火傷を負ったはず痛くも熱くも無い,着物は確かに燃えてるのに??」

 「あれ、夢だったのか?」

 「おお!2人共治ったのか、奇跡だ”!あれだけの大火傷を負っておきながら傷跡さえも残っていない!」


 「あれ、女神様が居る。ここは天国なのか?」

 「とっても綺麗な神々しいお方だ!」

 とうとう女神様にされてしまいました。



 お2人共、大丈夫なことを確認出来たのでこの村を出ることにしました。

「せめてお名前を」

「ユイと申します。では御機嫌よう」

お馬さんと馬車を確保して浮上すると、皆さん土下座して見送って下さいました。

これにて一件落着ですね。フオッフオッフオ。

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