第2話
「痛いんじゃぁー!」という叫びと共に私はベッドの中で目を覚ました。
「あれ?私、切られたんじゃ?」そう思ってパジャマをめくってみてみたが、傷一つなかった。ただ、切られた時の記憶だけは生々しく残っている。
「これがいわゆる、前世の記憶ってやつかしらね?」誰に聞かせるともなくそっとつぶやくと、私は急いで着替える事にした。時計は出勤予定時間を10分過ぎていた。
「おはようございまーす!」私は元気よく職場である王立錬金術研究所に飛び込んでいった。
「遅い!春蘭。今、何時だと思っているんだ」と銀色の長髪を後ろで一つにまとめた研究所の郭所長がじろっと私をにらんだ。
「ってっへっへっ。すいやせん。今朝の夢見があまりにも悪かったもんで。では、ちょっくら本日のお仕事を確認させていただきますよ。」と私はデスクに積みあがっている依頼書の山の中から一つを選ぶと早速、作業を開始した。
「まったく…、これが最年少天才錬金術少女と呼ばれる倫春蘭の実像とはね。」呆れ顔の所長は、不満げな顔をしながらも私にこれ以上何かを言う気は無さそうだ。さて、目を瞑って引き抜いた一枚目のこれは…。ふむ、なるほど。料理を瞬時に温める装置の開発とな。それって、電子レンジみたいなものかしら?って電子レンジって何?
途端に今朝の夢の事を思い出してしまって、一瞬、試作品作成用の魔法陣を描く手が止まった。夢の中の私は、何だかわからない記憶が浮かんで困惑していたが、今の私もまさにそれと同じ状態だ。どういうことだろう?それってもしや?
合わせ鏡を覗いたような感覚に身震いし、一瞬、手元が狂った。そのとたん、閃光と共に私は壁に叩きつけられて…。
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