第一話 ぴえん系地雷ファッション座敷童、来る


 青函トンネルを抜けた。


 列車を降りた。


 改札を、通る。

 あー!リュックが引っかかる!

 この!!


「ね、ね、その服ぅ! リボンいっぱいで可愛いー!」


 小娘に声をかけられる。

 ぴえん系地雷ファッション、わっちの仲間か。


「それ、何て言うの-?」


 何と言ったかの、どれ……スマホスマホ。


「髪もピンクで綺麗-!ハーフツインも!」

「そうかの」


 わっちの外見が小娘とさほど変わらないからと言って、舐めた口の利き方をしよる。

 そも、初対面じゃぞ?

 距離感バグっておるのか、こやつ。


「どこのお店で染めたのー?」

「わっちが自分でやった」

「え、すご!てか、わっちって何!ウケる!」

「やかましい」


 スマホを使っておる時に話しかけるでない。

 分かっとらん小娘じゃ。


「して、この服はの……キラキラツイードリボンジャンスカという」

「名前ながっ! どこのお店-?」

「アンくるくるクルージュ」

「マ? アンクルなら、すぐそこのパセリイーストにもあるじゃん!」


 愛用しておるブランドの名を告げると、小娘は走り去って行った。

 礼も申さぬとは無礼者め。

 時代がたがえば斬り捨てられておるぞ。



「君、ちょっと時間ある?」


 無視!


 岩手県遠野市からの道のり。

 能力を使えば一瞬。

 たまには散歩も、と思ったのは失敗じゃった。


「どっかのコンカフェの子?店教えてよ!」


 無視!!

 ええい、鬱陶しい!


「うわ荷物エグ!持とっか?」


 無視!!!


 南に歩くこと九分。


「写真お願いしてもいいですか?」

「うむ、構わぬぞ」

「ありがとうございます!」


 仲睦まじい男女の撮影を手伝ってやる。

 やはり、たまにはこういうのもわるうない。


 大きな時計のついた白い木造建築。

 見窄らしいが温かみもある。

 名前は何と言ったかの。

 とにかく、ここを左に曲がれば十五分も歩かぬうちに機関じゃ。


 おや、あれは……



「おい、夏奈かな」既読

『お座敷様!』

『お久しぶりですー!』

「今日のわっちは休日じゃ」既読

『そか』

『なら、かよちゃん!久しぶり!』

『いきなりどうしたんです?』

『何かありましたー?』


 夏奈は相変わらず、せっかちな奴じゃ。

 わっちが返信を打っておると、さらに追撃で小さくて可愛いキャラクターのスタンプが送られてくる。


「何か、もなにも」既読

『うんうん』

「無闇に街中で飛ぶでない」既読

『え』

「出すな、翼を」既読

『なんで分かったんですー?』

「見えるに決まっておろう」既読

「わっちは今」既読

「パナタワーのすぐそばにおる」既読

「聞いておるのか」

「おい」


 既読が付かんくなった。

 ふと見上げるとタワー頂上から、夏奈の姿が消えておる。

 

 四方にデジタル時計のついた赤い鉄骨造。

 この街の中心、パナタワー。

 以前倒壊し、わっちの力で直してやった。


「かよちゃーん!」

「騒々しい奴じゃの」


 金色に輝く短髪。

 制服姿の谷丸たにまる夏奈かな


「わー、おっきなリュック! 山とか行ったんです?」

「行かぬ」


「そう言えば、どうして北海道に?」

「今日が何の日か忘れたか?」


「そうだ! バレンタイン!」

「うむ」


「私も用意したんだった、チョコ!」

「謙一に渡すんか?」


「謙一先輩と……みんなに!」

「おん、では参るか」


 

 いざ、遠野対策機関北海道支部へ。

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