278 犬と

犬「ご主人様……」

高峰「ん? なんだい?」

犬「最近、辛そうです」

高峰「…………」

犬「右目が、痛いのでしょう?」

高峰「今は痛くないが」

犬「今は、痛くないってことはかつて痛かったのですよね、ご主人様」

高峰「…………うん」

犬「ご主人様、私はあなたによって具現化されました。なら、私はご主人様に対して奉仕する義務があります。私が出来ることがあれば、おっしゃってください」

高峰「……大丈夫だよ。俺は」

高峰はそう突き放す。

犬(ご主人様は何でも一人で抱え込む人だ。苦しい時に誰にも胸中を話さず、済まそうとしている。それが、私には悔しいのです)

高峰「犬よ。安心するが良い。僕は意外と強いんだよ」

高峰はそう話す。それがたまらなく悲しい犬であった。


残り277

〜続く〜

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