気づいたら異世界転生していました。 異世界で日本語を使うと呪文になるらしい。

LE/ON

第1話 異世界転生なんてありえない

「ただいま」

 誰も居ない家に帰る。

 学校が終わり部活にも入っていないため十五時過ぎに帰ってきた俺はいつものように冷蔵庫からジュースを取り出し、部屋に戻る。

 俺は、他の人から見たらややオタクと言えるだろう。

 漫画やラノベが部屋中においてあり、俺の好きなゲームのキャラクターが書かれた抱き枕がベッドの上にある。

 そんな俺を父さんや母さんは少し、白い目で見てくる。

「別にいいよ……」

 誰にも理解されなくてもいい俺が好きなだけだからそれに好きなものは人それぞれだと思う。

 さっき持ってきたジュースをデスクに置きヘッドホンをつけ最近はまっているFPSのゲームを始める。

「あーあ俺も漫画とかラノベのキャラみたいに異世界に転生とか魔法が使えるようになったらいいのに」

「そんなことあるわけないけど……」

 自分の言ったことに一人で突っ込む。

「俺もあの中二病のアニメみたいに」

「中二病になってやろうかな今は高校2年生だけど……」

 俺は、冗談を言いながらゲームに没頭する。

 気づけば部屋が暗くなっていて一階には母さんが帰ってきていた。

「もう十八時じゃん」

 母さんが下で読んでいる。

 どうやらご飯らしい俺は、下に行こうとドアに手をかけた。

 ドアを開けようとしたときに電話が鳴った。

 慌てて電話に出ると何も音がしなかった。

「もしもし?」

 電話番号に見覚えはなく電話に出ちゃダメだったかもと電話を切ろうとしたとき

 何か声が聞こえた。

 上手く聞き取れなかったため携帯に耳を近づける。

 今度ははっきりと聞こえる。

「イアケシ」

 確かにそう言ったがそんな言葉は知らないため意味が分からなかった。

「イアケシ?なんだそれ」

 すると、電話が急に切れた。

「なんだったんだ今の電話」

 意味の分からない言葉を知らないやつに言われた挙句俺が質問したら電話を切ってくる。

 そのまま少し怒ったまま俺は下に行こうとドアを開けると知らないところにつながっていた。

 ドアの先には見たことのない街が見える。

 俺は恐る恐るドアを超えるとドアが消えてしまった。

「あれ?ドアは?ここはどこなんだ?」

 街の真ん中で叫ぶ俺を見て周りの人たちは俺に怖がっている。

 すると、一人の男が近寄ってきた。

 その男は俺に何か言ってきている。

 しかし、それは日本語ではないため何を言っているのかわからない。

「あ、あのここはどこですか?」

 きっと伝わることはないと思ったが日本語で問いかけてみる。

 当然伝わることなどなく相手も俺も首をかしげる。

「ダメか……」

 俺は近くに落ちていた木の棒を手に取り地面に文字を書いていく。

 こんにちはと書いてみるが駄目なようだ。

 次は英語でhelloと書くがこれもダメだった。

 明らかに日本人ではないように見えたので英語をいろいろ書いてみる。

「え?」

 一つだけ文字に反応した。

 それは、hungryという英語だった。

「なんで、hungryなんだ?」

 その男が急に話し出した。

 すると、近くにいた他の男が近くの市場からリンゴのような果実を持ってきた。

 どうやらhungryの意味を理解しているようだった。

「thank you」と言ってみるがそれは通用しなかった。

「なんでだよ」

 そんなこんなで果実を食べ終え再び男と会話を試みる。

 やはりところどころ英語が分かるようだがどれも単語ばかりで話にならない。

「仕方ない日本語も試すか」

 今度は日本語を試そうと何を言うか考える。

 考えてみたがあまりいい言葉が浮かばなかったのでいろいろ言ってみることにした。

「じゃあまずはリンゴ」

 男は首を横にふる。

 その後も果物の名前を言ってみたがどれも分からなかった。

「んー果物は駄目なのか」

 そして今度は色を言ってみることにした。

 赤から始めいろいろ言ってみたが反応はない。

 だが、黒という言葉には反応した。

「黒が分かるのか?」

 男は縦に首を振っていたががとてもいい反応ではなかった。

 どちらかというと怖がっているように見えた。

 なんで怖がっているのか俺には分からなかった。

「だんだん暗くなってきたな」

 すると、辺りが急に暗くなった。

 空にはさっきまで太陽が出ていたのに今は月が出ている。

「なんだ?急に暗くなったぞ」

 急に月に雲がかかり始め辺りはもっと暗くなる。

 街の人たちはとても慌てて建物に戻っていく。

 男もおびえた様子で俺の手を引き建物に戻ろうとしている。

 近くの建物に入ろうとしたとき、街のはずれの方に人が立っているように見えた。

「ん?あそこの人は逃げないのか?」

 男の肩をたたきそっちの方に指をさすと男の息が上がった。

 俺の声でその人がこっちに振り返る。

 よく見ると、それは人じゃなくゾンビだった。

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