中田上神

 天井が赤かった。

 起き上がると、壁、床、照明、すべてが赤かった。

「……つっ、首いた」

 首を手でさする。

 長く寝てたせいだろうか。

 私は部屋の中にいた。

 部屋には机とイスとパソコンと、赤い扉が二つあった。

 それ以外はなんにもない部屋だった。

 なんでこんな所にいるのか、記憶がない。

 学生服のポケットの中を探ってみると、あったのは円形のものだった。

「口紅?」

 キャップを開けて、回して中身を出してみると、赤い口紅だった。

 首の痛さを我慢しながら、パソコンがある机の前のイスに座ってみた。

 パソコンの電源を自然と押していた。

 素直に起動し、画面が赤になった。

 黒字で文字が表示される。


《あなたは|が好きですか?》


『あなたは』と『が好きですか?』の間に縦線があった。

 何気にマウスでクリックしてみると、入力画面があらわれた。


《あなたの名前は【神】です。以下、入力してください》


「私の名前は中田上神なかたかずわ?」

 なんで私の名前をパソコンが知ってるの?

 奇妙なのは『中』と『上』の漢字に、赤い線が真ん中に引かれていることだ。

『打ち消し線』かな?

 キーボードを操作して、適当な文字を入力してみた。


 《ERROR》


 ブーと警報音がして、エラーが出る。

 なんどか文字を入力してみても、ずっとエラーが出続ける。

 あきらめて、パソコンの前にある、赤い扉を開けてみることにした。

 ノブを回して押してみるけど、ドアはまったく反応しない。

 引いてもだめだった。

 鍵がかかってる。

「はあ、なんなの?」

 赤い照明のせいで、目がチカチカしてくる。

 パソコンとは反対側のドアを開けてみた。

 あっさり開いた。

 部屋の外は、廊下になっていて、壁、床、照明、すべてうんざりするほど赤だった。

 前の壁を見ると黒字の『矢印』が描いてある。

『→』という記号。

「私を誘導してるの?」

 意味がわからないけど、矢印の通り進むことにした。

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