冷たい

鈴乱

第1話


 言葉を吐けば吐くほど、僕の唇は冷たくなって、凍えていく。


 僕の体も心も熱を失って、ただ抜け殻のような姿で笑っている。


 笑いたいのか、泣きたいのか、そんなことももう分からなくなってしまった。


 でも、今はそれでいいと思ってる。分からないなら、分からないままで。


 きっと、心も体もいつか冷え切って、何の音も発しない時が来るだろう。


 それなら、その時まで、せめてもの言の葉を紡いで、誰かに熱を届けられたらいい。


 どうせ、僕が吐くのは嘘だから。


 嘘だけど、それが人をあたためるなら、別にそれでいい。


 この世界がちょっとだけあたたまるなら、僕の嘘にも意味はあるんだろ。



 僕なんて、存在自体が嘘みたいなもんだから。嘘で彩った毎日だから。


 それなら、それでいい。


 これが、僕が選んだ生き方だ。


 僕の熱が誰かに宿れば、それで僕の嘘は永遠になる。


 僕の熱は……あとどのくらいもつかなぁ。

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冷たい 鈴乱 @sorazome

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