第2話運命を変える出会い

放課後の街を僕と尚は二人で歩いていた。

中々にお洒落な喫茶店へと入店すると尚は慣れた足取りで席へと向かう。

メニュー表を持ってきたウエイトレスに尚は普段通りとでも言うように口を開いた。

「クリームソーダ二つね」

ウエイトレスはその言葉に薄く微笑んで頷くと口を開く。

「今日は学生の男連れ?この子もプロ志望なの?」

ウエイトレスと尚は顔見知りのようで砕けた口調で会話を広げていた。

「いいや。そういうわけじゃないみたいだけど。でも相当強かった」

「そうなんだ。尚が気にいるなんて珍しいじゃん」

「まぁね。何か似たような匂いがしたんだよ」

「でた。尚の直感」

「もう良いだろ。早く注文通してきてくれよ」

「尚が来た時点で裏には注文通っているよ」

「………私が別のもの頼むって思わなかったのか?」

「まず無いでしょ。そこは信頼しているから」

「なんだかな…」

二人のやり取りを何気なしに見ていた。

尚はウエイトレスをウザったそうに手で払うような仕草を取ると僕に視線を向けた。

「急な話で申し訳ないんだけど…今度の大会のメンバーになってくれない?」

「え?でも…僕はプロじゃないですけど…」

「それは大丈夫。アマチュアも参加できる大会だから」

「そうなんですね…メンバーが足りなかったんですか?」

「そうなんだよ。一人だけ迷っていてね。奏音がさっき使っていたキャラはまだ対策がしっかりされていないんだよ。だからさっきプロ相手でも十八連勝出来たわけだし。あのキャラで参加して欲しい。絶対にダークホースになる」

「ですかね…」

「もちろん私も力貸すから」

「それは…嬉しいですが…」

「何を迷っているの?きっと今は人生の分水嶺だよ?」

「えっと…」

「自分の人生だから自分で決めると良いけど。きっと道は自分で切り開くだけじゃないと思うんだ。誰かとの出会いがキッカケで道が開く可能性だってあると思う。それが今回私と出会った意味なのかもしれない」

尚の話の意味は高校生の僕でも理解できるところだった。

何故ならば高校生まで僕は話が合わないと煙たがられていたというのに…。

今、目の前の尚とは話が合わないなどと言うことはない。

共通の話題で会話が続いている。

「じゃあ…参加させてください」

「よし!来た!本番は一ヶ月後だけど頑張ろうね!」

「はい」

そうして僕と尚はそこからクリームソーダに舌鼓を打ちながら大会についての話をするのであった。



「これ私のゲーム内IDだから。パスワードはいつもこれ。ゲーセンにいない時はルームに居るから。特訓する時は連絡する」

「了解です。では」

「あぁ。出会えて良かった。この出会いが私の運命も変えてくれると思うよ」

「ですか。僕もそう思います」

「ふふっ。じゃあまたね」

そうして僕らは喫茶店の前で別れると帰路に就くのであった。

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