読書の旅々
子鹿なかば
自分の感情に目を向ける〜漫画『響 〜小説家になる方法〜』を読んで〜
積読になっていた漫画『響 〜小説家になる方法〜』を全巻読んだ。
非凡な文才を持つ女子高生が小説家デビューを果たし、文芸界に大きな変革をもたらす物語である。2018年に欅坂46の平手友梨奈さん主演で実写映画化されて話題となったので、そのとき知られた方もいるかもしれない。
この記事を書いている私自身も、小説を書くことに興味を持ち、カクヨムでアカウントを作成した一人だ。タイトルに「小説家になる方法」なんて入っていたら気になってしまう。
主人公の
そんな彼女の特徴は暴力だ。
文芸部入部を拒んできたヤンキーに対しては小指を折って黙らせる。文芸部の本棚の並びについて部長と意見が合わなかったら本棚を倒して自分の意見を押し通す。週刊誌の記者に追われた際は、記者の家に押しかけて脅迫をしたり、などなど。
彼女は暴力的行動で目の前の問題を解決していくのだ。
彼女の書いた小説がきっかけで彼女の日常はどんどん変わっていくが、彼女は変わることなく誰に対しても(なんと首相にも!)暴力で解決していく。そんな展開は痛快であり、続きを読みたくなる強い引力があった。
彼女のこの暴力性は自分の感情にひたすら真摯に向き合っている表れなのだろう。世間の常識よりも自身の感情を優先し続けた彼女だからこそ、世間を揺るがすような小説が書けたのだ、ということなのだろう。
この点に自分は感化されつつも、強いもやもやを感じている。
もやもやの正体は暴力を正当化してしまっていることだ。
響は非凡な文才を持っているにも関わらず、目の前の問題に対しては対話を拒絶して暴力に頼る。そんな精神的な幼さがどこかで成長するのかと期待したが最後まで変わらなかった。逆に彼女の暴力性こそ天才の一部分であると位置づけ、だからこそ彼女はすごい小説を書けたんだ、という内容にしているのがどうしても自分は消化できなかった。
素晴らしい小説を生み出せる響だからこそ、自分の言葉を、他者との対話をもっと大事にしてほしかった。そこに気づく内面的変化を見てみたかった。
一方で、この作品は自分に確かなきっかけを与えてくれた。この文章を書きはじめるきっかけだ。
響はたとえ暴力に頼ってでも、自分の内なる感情と真摯に向き合い続けていた。
自分はそんな彼女に対して反発を感じつつも、同時に強い憧れを抱いてしまった。
いざ自分自身の心に目を向けてみる。自分の感情がなんだか錆びついているように見えた。
自分は日常の中で何を感じ、どんな光景に自分の心は動いているのか。そこからどんな自分は言葉をすくい取るのか。その一瞬一瞬にしっかりと目を向けたい。感情に誠実に向き合いたい。そんな想いでこの文章を書き始めた。
この文章書いている時、響のあの鋭い視線がつねに私を見ていた。「文章をきれいにまとめようとして、自分の感情に嘘つくなよ」とでも言いたそうにずっと睨みをきかせているのだ。嘘をつこうとするとすぐさま殴りかかってきた。
なるべく自分の感情に嘘をつかず、かつ、読んでくださった読者になにかしら気づきや興味関心を与えられるような文章を書いていきたい。そんな文章を目指して今後も書いていきます。
不定期更新になりますが、読んでいただけたら幸いです。
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