言の葉は異世界で散る

夏葉緋翠

第1話 お決まりのパターン

 ―お前良い子ぶってんじゃねぇよ―


 ……なんで?

 ルール守ってただけじゃん。

 守らなきゃいけないのがルールだよね?


 ―真面目だね。もう少し力抜いたら?―


 ……ちゃんとやらないと怒られる。

 また怒鳴られる。

 だから、ちゃんとやることだけ考えてきた。

 今更力を抜けって言われても。


 ―ちょっと助けて欲しい―

 ―話しかけないで。またウチに戻っちゃうじゃん―


 ……いじめの対象が僕に移った途端にそれか。

 僕のことを助けてくれる人は居ないの?


 ―やりたいことをやればいい―

 ―ダメだ。前にそれで失敗しただろ―

 ―あなたには○○が向いてる―

 ―そんなものに時間をかけてどうする―

 ―あんたのために言ってるんだ―


 ……何をやればいいんだろう。

 僕は何が出来るんだろう。

 弟は良いのに、僕はダメなの?


 ああ、昔から僕は失敗してばかりだもんね。

 今更何か新しい夢なんて持てないよ。


 ―お前は(先輩は)まだ良い方じゃん(ですよね)。幸せそうだし―


 ……僕の何を知ってそんなこと言うの?

 僕が全く苦しんでいないとでも?


 ―あいつ昔○○してたんだよwヤバくね―


 ……親友だと思っていた彼は、僕の秘密をバラして、それを話題にして友達を増やしていき、僕は独りになった。



 人はいつか裏切る。

 僕はきっと、周りの人達からしたら都合の良い奴なんだと思う。


 頼めば面倒事を代わってくれるし、声もかけやすい便利な奴。


 何とか何とか必死で食らいついている状態でも、周りから見たらスマートにやってのけているように見えるらしい。


 勝手に期待されて、それが出来なかったら勝手に失望されて。


 嫌われたくなくて、離れていってほしくなくて、頑張って頑張って、頑張って……。


 皆に良い顔をしていたら、本当に思っていることを言わない信用ならない奴。愛想だけは良い奴。そういうラベルを貼られてしまった。


 まぁそうだよね、今なら分かる。

 ただの八方美人だった。


 もう自分がどうしたら良いのか分からなくなった。


 もう自分の意思はどうでもいいの。

 何を言ったって……。

 どうせこっちの意見は聞いてないし、向こうの選択を押し通してくるのだから。


 僕の話を遮ってまで、どうでもいい話をしてくるの。

(―誰か、僕の話を聞いて―)


 でもいいの。それを聞けば相手は喜んでくれるから。

(―僕だって、話を聞いてもらいたいの―)


 どうせ僕の話を聞いてくれる人はいないから。

(―お願い。聞いてくれるだけでいいの―)



 それでも僕は、どれだけ苦しくても、たとえ自分がやって貰えなくても、自分に出来る人助けは止めなかった。


 いつかは自分に返ってくるって、そう信じていたから。


 自分が同じように困っていたら、そうして欲しい。だから、今目の前で困ってる人がいたら、声をかけるようにしていた。


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