1104 人が努力する理由

 真菜ちゃんを着替えさせた後、山中君・カジ&グチ君と合流し一緒に倉津君の家を目指す事に。

そして、その中で会話された眞子の話を、真菜ちゃん達は、どう受け取るのか?


***


「あの、姉様。姉様は、私に、なにか伝え様とされてませんか?」

「うん、してるよ。崇秀の話に刺激を受けて欲しいと思ってるね。それで真菜ちゃんにもテニスだけじゃなくて、色々なものにチャレンジして欲しいかな」

「それは服装の件でしょうか?」

「そうだね。まぁ本音を言えば、それだけじゃないんだけど。まずはそこ。真菜ちゃんは女性なんだから、まずは、そこが一番重要だと思うよ。女の子は、どうでも良いって認識されるより、普通に見て貰った方が良いし。普通より、可愛く見て貰った方が、もっと良い。そうやって段階を1つづつ踏んで行けば良いと思うよ」

「あぁ、はい……ですが姉様、私には、どうすれば良いのかが解りかねますが」


そこは先人に聞けば良いんだよ。

解らない事を恥だと思わず、人からドンドン学んで、自分に吸収すれば良いだけなんだよ。


『聞くは一瞬の恥。聞かぬは一生恥』だよ。



「あぁ、それならね。私で良かったら、幾らでも相談に乗るよ。それに、そう言う関係の人を沢山紹介してあげるから。その人達にも色々相談してみると良いよ」

「あっ、有難う御座います姉様。1人で解らないと嘆いていても仕方が無いですものね」

「そう言う事。女の子は綺麗に成れば成る程、得な面も多いからね」


ふふっ、化物をまた1人、世の中に放ってやった。

こうやってヤル気にさえなれば、この子は確実に化ける。


まぁその分、追い付かれない様にする為に、私には多大なプレッシャーが掛かるけどね。


それもまた良しだよ。



「そやけど眞子ちゃん。そこまでナンデモカンデモする理由が有るんか?」

「あぁ、それは、結構、微妙な話だね。人には、それぞれの捉え方って言うのもあるから、流石に、断言までは出来無いね。全部を得ようとするのは、ちょっと異常かな」

「なんや?ほんだら秀は異常や言うんか?」

「あぁ、うん。これはあんまり私の口からは言いたくはないんだけど。事実、崇秀は異常だよ。……でもね。女の子の目線で、崇秀を1人の男性として見た時、凄く格好良く写るのも現実だと思うよ。……あぁけどね。それに反して、もぉ1つ格好良いと思うのが、1つの事に拘って、それを貫き通し、極め様とするスタイル。それもまた格好良いとも思うよ」


まぁ、こう言っちゃうと。

さっき『色んな事にチャレンジして欲しい』と真菜ちゃんに言った以上、少々話に矛盾が見えるかもしれないけど。

これは、そんな単純な話じゃなくて、ある程度、色んな事をして来た山中君にだからこそ言える話。


そして彼自身、もう既に『プロのミュージシャン』として活躍してる以上、まずはそこを極めるのが順当。


早い話、山中君には「優先順位」の話がしたかったのよ。

ただの学生である真菜ちゃんと、プリで活躍する山中君とでは立場が違うからね。



「なんや俺、なんか言われてる気がするなぁ」

「気がするんじゃなくて、ハッキリ言ってるよ。私は、山中君のドラムの音が好きだから、今みたいに変に妥協せずに、もっともっとドラムを極めて欲しいなって思ってるね。男の子だったら、それぐらいしないと格好付かないでしょ。諦める事や、悔やむ事は、全部やり尽くしてから、その後でも良いんじゃないかな」


物凄く大変だけどね。

でも、それも自分の為だと思えば出来ると思うよ。


それに、そうやって実績を重ねた自信が上手く乗れば、素直ちゃんにも色々なものが届くと思うしね。


そこが、この山中君に向けた話の重要ファクターなんだよね。



「……マコから、なんぞ聞いたんか?」

「うぅん、直接なにかを聞いた訳じゃないよ。真琴ちゃんの言葉のニュアンスから、そう感じただけだから。特になにかを言われた訳じゃないよ」


……って言うか山中君。

私が転校してきた時に、校門近くで、自分で言ったの忘れてるね。



「さよか」

「うん、でもね。まだまだ山中君には伸び代が残ってるんだから、そんなに簡単に諦めちゃダメだとも思うんだ。山中君には、もぅ1度、崇秀の敵として立ちはだかって欲しい。なにもかもを諦めるには、まだ若すぎるよ。それとね。カジ君やグチ君も、これから、崇秀の新しい敵になって欲しいね。アイツを退屈をさせちゃあダメだよ」

「へっ?俺等もか?」

「うん。勿論」

「……いや、そんな無茶な。俺等が、仲居間さん相手に勝てる訳ないだろ」

「そうかなぁ?そうでもないよ」

「なっ、なんでだよ?」

「だって、崇秀は、現時点でも、かなり自らの力で極限状態まで引き上げてるから成長が難しく成ってくるでしょ。その件を踏まえて考えるなら、伸び代や、成長度合いは、カジ君やグチ君達の方が一杯残ってる訳じゃない。なら、少しづつでも追い付く事も可能なんじゃないのかな」


まぁ……それでも崇秀は成長を続けそうだけどね。

あの人の場合、基本的に止まる事を知らない暴走機関車どころか、何処や彼処から自身の成長を促す物を探してくる様な人だからね。


まさに稀代の天才。


でもね。

そんな崇秀の件は抜いたとしても、自身の成長を促す事は、とても良い事だと思うんだけどなぁ。


それこそ、やって置いて損はないんじゃないかな。



「物は言い様だな」

「まぁね、まぁね。でもさぁ、退屈するよりは、面白い人生の方が良いでしょ?だったら、自分から面白い事に突っ込まないと、面白い事なんて、なにも見付からないと思うよ」

「確かにそうだな。何度も口酸っぱく言われてる言葉だが、中々現実的には成らないものだがな」

「それも言えてるよね。けど、本当はね。難しいからこそ面白いんじゃないかな?簡単な事が出来ても、それじゃあ、本当の意味での満足は得れないと思うしね」


これだよこれ、これなんだよね。


だって簡単な事はね。

誰にだって簡単に出来ちゃうから、それなりの満足しか得れないし、大して面白くない。

それに比べて、自分自身で難しいと思う事にチャレンジすれば、達成した時の満足感は人一倍。


なら、これをやらなきゃどうするのって話。


まぁ、これを自己満足と言われてしまえばそれまでなんだけど。

それでも私は、この大きな満足を得る為にも、みんなのヤル気を、もっともっと上昇させて欲しい。


崇秀の受け売りだけどね。



「言えたな。だったら、そこを目指すのも悪くないのかもな」

「でしょ、でしょ。文科系だろうが、体育会系だろうが、真剣に取り組む事は、自分の将来を見据える事が出来る様に成るから、決して損は無いと思うよ」


これね。

『努力』ってカテゴリーには分け隔てが無いって話なんだけどね。


昔からね。

体育会系の努力と、文科系の努力を、変に分けて話をしようとする人が居るでしょ。


あれ……大きな勘違いなんだよね。


実際は、どちらの努力も同じ。

両方とも『大きなリスク』を背負って、目標に向って一生懸命『努力』してるから、なにもかもが同じなんだよね。


まぁ……良く言われる言葉で、リスクを例えるとするならば。


『運動系は、プロに成らなきゃ話にならないのに、アイツ等良くやるよな』

『バンドに夢なんて見て、馬鹿じゃないのか?そんなリスク良く背負えたもんだな』


ねっ……基本的には一緒でしょう。


まぁ要するにですね。

努力するって言うのは、個人の向いている方向性の問題。


だからって訳じゃないけど、体育会系の真菜ちゃんが一緒に居る、今だからこそ、この話をさせて貰ったのよ。


それにこれは、リスクが大きければ大きいほど、将来的に与える影響を大きい。


もし仮に……必至にやってもダメで、夢破れたとしても『あの時の比べたら、これ位なんて事ない』って強い気持ちには成れる筈だからね。


努力を惜しんじゃいけないんだよね。



人生に出し惜しみは無しだよ。



「まぁ、そうだな。なにもかもを損得でやる訳じゃねぇけど。真面目にやるのも、そう悪くもないのかもな」


そう言う事です。


だから、まずは自分の限界まで全力で行ってみよう。

それでダメなら、他人の力を借りても良いじゃない。

そう言う前向きな姿勢こそが、一番大事なんじゃないかな?


……って、あり?

真琴ちゃんの家に向かいながらとは言え、人の行きかう路上で、なにを熱く語ってるんだろうね?


翌々考えると、結構、恥ずかしいね。



なので、そろそろ話を纏めよ。



「うんうん。結果的には、そう言う事だね。……だから、みんな頑張ってね。私も、みんなの敵に成れる様に頑張るからさぁ」

「そう言う纏め方するか?此処は、一緒に頑張ろって言う所なんちゃうんか?」

「あぅ。それは失礼しました。でも所詮は私だから、こんな風にしか言えないんだけど。でも、みんなには、もっともっと人が羨む様な人生を送って欲しいから。まだまだ、心で燻ってる敵対心を煽りたかったんだよね」

「ホンマ、そやな。現状に満足して、保険掛けてる様じゃアカンわな」


いや……それは有りだと思うよ。

ダメになってから、ジタバタするのは、あまりにも危険だからね。


でも、そう言う空気じゃないから、此処1つ黙ってようっと。


……って思ってたら、丁度、真琴ちゃんの家の前に着いたから、この話はお仕舞いしよ。


話の切れって奴ですね。


***


 ……っで、この後。

また私が予想もしてなかった事柄が、真琴ちゃんの家の中で起こっていたんだけど。


まぁ、それは次回の講釈と言う事で……


***


―――次回予告。


崇秀が居ないと言うのに、また不可解な事が起こり始めたよ。


定義される問題は、いつも山積みだね。


なんじゃね、これは?


次回『Quest(難題)』

……を、お送りします。


本当に、なんじゃね、これは?


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


【後書き】

最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございましたぁ♪<(_ _)>

これにて第一章・第六十五話【Meet to meet(集合)】はお仕舞に成るのですが、如何でしたでしょうか?


それにしても眞子……真菜ちゃんに理解して欲しい事があるのかして、かなり熱弁をかましてますね(笑)


まぁでも現実的な話で言っても。

『暇だなぁ』とか『なんか面白い事ないかなぁ』なんて言ってる人の大半は、自分からは何1つ動いていない人が多い。

そして『自分から面白い事を探すのではなく』

『他人から勧められた面白い事を、何も考えずに受け入れる』から、直ぐに飽きたり、ちょっとした事で挫折してしまう。


ですが、考えてもみれば、これは当たり前の事。

本気で自分が面白いと思ってない他人に薦められた事を始めても、相当相性が良くなければ長続きする訳がありませんし。

なにより『他人に薦められた事』だと言う言い訳をして、直ぐに、その事象から離脱する事が出来ちゃいますからね。


なので、他薦自選問わず、ちゃんと物事を見極めてから目標を立てなきゃ意味がないって話でもありますね(笑)


さてさて、そんな中。

次回からは、第一章・第六十六話【Quest(難題)】を始めたいと思います。


果たして、眞子が外出してる間に、倉津君の身になにが起こったのか?(笑)


なんか嫌な予感しかしねぇな( ゚Д゚) ('ω'*)気のせいです

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