5 中原立案「SF吹奏楽部!→エスエフすいそうがく部!」

四話まで・連載中 28,667文字


公開 2022/08/23


SF


完成すれば長編?



 怪作です。データでおわかりのように、公開後、なかなかさくさくと新エピソードがアップされないでいるし、文章・設定ともいろいろと荒削りなところもあるのですが、とにかく怪作です。まさにこういう小説を紹介することこそ、スコップエッセイの醍醐味というものです。

 過去、歌唱とか楽器演奏なんかをSFっぽくする試みは、小説でもドラマでもアニメでも、さまざまなアイデアが世に問われてきました。が、近年での例を思い浮かべると、どうしても「マクロス」シリーズの影響が大なり小なりあって、ひとことで言うと「歌でキャラを鼓舞する」というスタイルになってしまいがちです。

 誰が想像したでしょうか。吹奏楽で、それも楽器を構えた姿そのままでバトルを展開する作品世界が創造し得たなど。

 誰が考えついたでしょうか。吹奏楽部全員で音のビーム(?)をぶつけあう、脳筋音楽SF小説などを 笑。

 当然、この作品の舞台は普通の学校ではありません。架空世界(電脳空間?)の、一応中学校っぽいところなんだけれども、生徒はみんな軍組織になっていて、学内に研究室とかがあって、吹奏楽部はなぜか同じ部の中のセクション同士で相争っているという、訳の解ら……壮大なバトルエンターテインメントが展開されている、血湧き肉躍る素敵な世界です。

 ちょっと本文から引用してみましょう。


「……私たちは放課後になると部活と称しながら、この世界で覇権争いをしている。空を支配する私たちのいる金管航空宇宙作戦隊。大陸を支配する木管帝国陸軍。海を支配するパーカッション(打楽器)海兵隊。この三つ巴の戦争を勝ち抜かないといけない」(第二話より)


 なんだかすごそうじゃありませんか? 

「なんだ、しょせんミリオタ小説か」と思われるかも知れませんが、楽器ネタは飾りではなく、きちんとメインに据えられています(多分)。具体的に書きませんけれど、「ここでその楽器を出すか!?」と慄然とするような、すごいネタの使いどころがあったり。なんと言いますか、SFアニメのお約束と、戦略ゲームっぽいパワーポリティクスと、学園部活もののテンプレがほどよくブレンドされていると申しましょうか。

 まあ逆に言うと、音楽系小説でありながら、ミリタリー方面の趣味がなければついていけない部分があるとも言えるのですが……その二つのハイブリッド趣味人にはたまらないものがありますね。

 どうでもいいけど、「音楽」はあるの? という疑問が出てくるかも知れません。確かに今のところ、単音をビーム兵器として活用している描写しかないようですが、「コンクール」とか「課題曲」とかいう言葉が出てきているんで、そのうち曲の演奏シーンも出てくる……はずです。推測ですが。

 最後にもう一点触れておきますと、本作はネタを並べただけの設定マニアな小説というわけでもありません。第二話の終わりには、ちょっとしたどんでん返しみたいなことになっていて、ドラマ的にもなかなか読ませどころを考えた作品になっているんじゃないかと思います。

 そういうわけで、他にはちょっと例を見ない怪作、ぜひご覧あれ。


→ 「SF吹奏楽部!→エスエフすいそうがく部!」https://kakuyomu.jp/works/16817139557934117462



ポイント分析

  古き良きロボットアニメ的な序盤の盛り上げ方 ****

  吹奏楽部の新入生体験入部あるある ***

  ラノベスタイルのキャラ設計 ***

  謀略ゲーム的展開への期待 ****


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